仏像や仏画で私たちが目にしているご神仏のお姿や手に持っているもの、表情などには、それぞれのご神仏が持つご利益などに関連した意味があります。それらの意味を知ることで、今ある願いに最適なご神仏により深く祈ることができるようになります。
ここではご神仏それぞれのご利益などについて、嵐山晶さんの著書『願いをこめて、心身を整える ご神仏なぞるだけ瞑想』から、嵐山さんの繊細で美しいご神仏のイラストとともに紹介します。
© 嵐山晶
もともとは
戦闘と財福の神だった
大黒天は、ヒンズー教のシヴァ神の異名「マハーカーラ（マハーは「大」、カーラは「黒」もしくは「時」）」が仏教に習合された仏様です。
もともとは忿怒の相に武器を持った戦闘と財福の神でしたが、中国を経て日本に伝わると、財福のご利益が強調されるようになりました。
また「大黒」の読みが「大国」と通じるため、神道の大国主命とも習合され、七福神の一尊「大黒様」として信仰を集めています。
究極の福の神
「三面大黒天」
今回描いたのは、三面大黒天。
正面に大黒天、左右に毘沙門天と弁才天を配し、それぞれの神が持つ財福、戦勝、芸術などの現世利益を集約した、大黒天の発展した姿を表しています。三面大黒天はいわば究極の福の神であり、合体像です。
豊臣秀吉が念持仏として信仰したことでも知られます。
何でも出てくる法具に込められた
豊かさへの願い
大黒天が手にする小槌に描かれた絵と米俵を結ぶ縄の留め具は、どちらも如意宝珠（にょいほうじゅ）。
如意宝珠は中から何でも出てくる無限ポケットのような法具で、「米が無事収穫でき、農業が発展しますように」「小槌からあらゆる財が出てきますように」といった願いが叶うよう描かれています。周囲に描かれた大判小判は、小槌から金銀財宝や食料があふれ出て散らばった様子を表しています。
究極の福の神である三面大黒天に、金運アップはもちろんのこと、望むものすべてに満たされる豊かさを願ってみてはいかがでしょうか。
© 嵐山晶
東京都生まれ。日本デザイン専門学校卒。主にアジア圏の歴史文化を題材に、伝統的な図像に現代の感覚を取り入れた作品制作に取り組んでいる。挿絵を担当した書籍に『ときめく御仏図鑑』（山と溪谷社）、『龍神とご縁を結ぶ 「龍使い®」ノート』（宝島社）などがあり、他の活動に谷中西光寺の御朱印イラスト制作などがある。
高野山真言宗の阿闍梨。牧野山蓮乗院五十三世住職
高野山大学文学部密教学科卒業。高野山真言宗総本山金剛峯寺において得度。高野山真別処円通律寺において受戒。華道高野山一般華・伝統華師範補任。高野山大学加行道場大菩提院において加行成満。高野山宝寿院道場において伝法灌頂入壇了。主に小野方、三宝院流を中心に一流伝授を受け、真言神道、野沢三十六箇流総許可を受ける。
※本稿は、嵐山晶・著『ご神仏なぞるだけ瞑想』（ダイヤモンド社）から再構成したものです。
