他者に依存せず、自立して生きるにはどうすればよいでしょうか。熱海の「ホテルニューアカオ」や天王洲「寺田倉庫」の経営改革を手掛け、テレビ東京「ガイアの夜明け」やNHK「SWITCHインタビュー達人達」で話題となった「伝説の経営者」中野善壽氏。「すべてを捨て、孤独を受け入れることで、“個”として立つことができる」と著書『孤独からはじめよう』と『ぜんぶ、すてれば』で語っています。本記事では『ぜんぶ、すてれば』から、人生を颯爽と楽しむシンプルな考え方を紹介します。
毎朝欠かさず自分自身に誓いを立てる。
朝からせっかちに過ごす僕ですが、どこにいても出かける前に欠かさない習慣が一つあります。
お祈りです。
お祈りといってもささやかなもので、手を合わせて自分自身に誓うもの。
自分の名前と住所を言って、「今日もがんばります」と。
そして、「明日迄(まで)の食べ物はいただいているので、資源をさらに増やせるように精一杯がんばります」。最後に、「お導きには従います」。
この三つを必ず口にするんです。
持てる力を尽くして、流れには逆らわない。シンプルな信条です。
きっかけは、自己啓発系の本を読んで影響を受けてですが、二十五歳くらいから五十年以上継続しています。
単純なものですが、「自分に祈る、自分に誓うっていうのはいいな」という実感があるから、ずっと続けています。
ものごとがどうしてもうまくいかないときは、自分自身に負けているとき。
自分に負けないためにも、毎朝誓って姿勢を正すことが大事です。
だから、遅刻しそうだとしても、絶対に省きません。
帰宅して「ただいま」と言った後にも、必ず「今日はありがとうございました。また明日もがんばります」と手を合わせています。
人生の楽しみは変わる。年代なりの楽しみ方を味わう。
今日一日に集中して人生を楽しむ。
人ができることは、これに尽きると思います。
僕は七十五歳になりましたが、振り返ると、二十代、三十代、四十代と、年代ごとに楽しみの中身は変わってきました。
二十代は女の子とデートする妄想ばかり。
三十代になって子どもが生まれると、子育てが楽しくなって。
子どもが育つ様子が面白くて、興味津々で、子どもが泣き出すまで本気で遊んでいました。
小さい頃から防具を付けてピンポン玉を思い切り投げられて、息子たちも気の毒です。「おかげで野球が嫌いになった」と文句を言われます。
仕事が面白くなってきたのは四十代からです。
朝から晩まで仕事のことを考えて、仕事の中に楽しみを見つけるというより、仕事そのものが楽しみになってきた。
どの年代もそれぞれに充実していたし、そのときでしか楽しめない目の前のことに夢中になっていた。
だから、「あのときにもっとこうしておけばよかった」という心残りはほとんどない。
これでよかったんだと思います。
(本原稿は、中野善壽著『ぜんぶ、すてれば』から一部抜粋・改変したものです)