2021-01-31 23:33:57
高知東生 @noborutakachi
 俺は「人の裏を読め」を金言としていた。この度危うくyoutube の見過ぎで陰謀論を信じかけた事を内省したが、よく考えたら表の仕組みを何も知らないんだよ。そもそもの知識がないし、知る努力を面倒くさがってた。でもちゃんと調べなくても裏を読んだつもりになるって楽に賢そうな気分になれたんだよ

 これはなかなか勇気ある証言です。高知氏は自分を「知識がない」「賢くない」と卑下していますが、こうした筋道だった分析は、まぎれもないすぐれた知性の産物でしょう。

 これにつづく高知氏の論旨を私なりにまとめるとこうなります。

 ある種の人々は、単純で断定的な結論を言い切ってくれる人の話にひきつけられます。彼らの話はわかりやすい。専門家はいろいろな角度から複雑な議論を展開するため、わかりにくくて結論も曖昧だったりするので敬遠されることになります。

 自分の知性に自信がない人々は、YouTube やSNSに流れてくる、シンプルな「裏情報(本当は裏でも何でもないが、裏っぽく見える情報)」にひきつけられがちです。なぜか。裏情報は、「表の知識(一般常識、根拠のある情報)」のメタレベルだからです。つまり「表ではこんな風に言われているけれど、実は……」というロジックですね。苦労して表の知識を学ぶよりも、すぐに理解できるマイナーな知によってマウントが取れる快感がそこにあります。

 これは他人事ではありません。私も学生の頃に、ユングの「シンクロニシティ」とか「曼荼羅」とか、オカルティックな側面にハマりかけた経験があるからです。知的なコンプレックスを抱えていると、ウラの知識で一発逆転を狙いたくなる気持ちはまったく共感できます。「これで全部わかった!」という快感もまた、知性の働きではありますが、非常に危険な誘惑なのです。

「自分は裏の仕組みを全部知っている」という快感は個人的なものですが、これがコミニティとして共有されると、そこに「仲間として承認される」という快感が加わります。

 つまり「世界の裏の真実を共有している集団に帰属している」「その仲間とつながり承認されている」という快感ですね。これは単なる自己満足を超えた快楽をもたらしますので、抜け出すのがいっそう困難になります。高知氏は幸い、そうした集団には帰属していない段階で間違いに気付いたということなので、そこは幸運でした。

 ここにキャラの要素が加わるかどうかは未検証ですが、陰謀論のまん延においても「承認依存」が一役買っていることは間違いないと思います。