日本のばかばかしい働き方には付き合っていられない
日本人からすれば、社会に出る前から骨の髄まで叩き込まれるこの一般常識は、実は多くのアジア人にとっては、シンプルにイラっとくる非常識だ。筆者もこれまで日本企業で働く外国人から「ホウレンソウ」への不満を幾度となく聞いてきた。「自分の頭で考えて仕事ができないってどういうこと?」「信用されていない感じがしてやる気をなくす」など大不評なのだ。
もちろん、日本企業側からすれば真逆の反応だ。「いくら教えてもホウレンソウをしてこないのでトラブルを察知するのが遅い」などと、日本流に従わない外国人に辟易としている企業も少なくない。
こういう“文化の衝突”は日本が経済大国としてアジアの中でも存在感があった時代は、それほど表面化しなかった。アジアに進出した日系企業は、現地の生活水準に比べるとかなりの高収入が得られる憧れの就職先だったので、「ホウレンソウ」のような不快な日本の企業文化でもがまんをして受け入れる人が多かったからだ。
しかし、ご存じのように今や日本の存在感はガクンと低下した。世界の時価総額ランキングでも30年ほど前は、トップ50社のうち32社は日本企業だったが、現在はトヨタ自動車がかろうじて入っているだけだ。また、賃金もまったく上がっていない。その一方で、中国やベトナム、タイ、インドネシアなどアジア各国が経済成長して、世界的企業も続々と生まれ、日本企業よりも高い賃金を払っている。
つまり、かつて隆盛を誇った日本企業が落ちぶれるのと反比例するような形に、自国企業が成長したことで、これまで黙って従っていたアジアのホワイトワーカーたちが、「やっぱり日本のばかばかしい働き方には付き合ってらんねーや」と声を上げ始めたというわけだ。
このような流れはあまりよろしくない。アジア進出している日本企業への反発が高まることで、そこで働いている、あるいはかつて働いていた現地の人たちが、「日本式の働き方を強要されて精神的苦痛を受けたので賠償せよ」なんて言い出しかねないからだ。