日本軍式マネジメント「命・解・援」
そんな日本軍式マネジメントのひとつが、「命・解・援」だ。これは上官の心得みたいもので、下っ端の兵隊を動かすには、しっかりと命令を下して、「なぜそれをやるのか」「どうやるのか」と解説をしてやって、さらにその命令が実行できるような助言などの援助もしてやらなくてはいけないというものだ。
ここまで言えばもうお分かりだろう。我々がありがたがっている「ホウレンソウ」というのは、「命・解・援」の世界観を部下側から焼き直したものに過ぎない。
つまり、アジアに進出をした日本企業が「組織の風通しをよくするために必要なものだ」なんて、現地採用した外国人に強要している「ホウレンソウ」は、日本軍がかつてやって現地の反発を招いた「日本式の強要」そのものなのだ。違和感や嫌悪感を抱くのは当然だ。
「歴史は繰り返す」ではないが、同じルーツを持つ組織が同じことをやれば、同じ結果になる可能性は高い。日本企業も日本軍と同様の道をたどる恐れがある。今までは経済大国ということで抑え込まれてきた「日本式」への不満が一気に爆発して、大規模なジャパンバッシングを引き起こす恐れもあるのだ。
成長著しいアジア諸国と対照的に、日本の賃金はまったく上がらず成長も停滞している。つまり、経済戦争での惨敗は近い。
そうなった時、「人気のないニッポン」くらいならまだマシで、あの戦争の後のように、「憎いニッポン」が盛り上がることだってある。「日本が好き」と公言してくれるアジアの人々は多いが、それは観光先やアニメなどの文化であって、日本企業や、日本の働き方ではないのだ。
アジア進出している日本企業の皆さんはぜひそのあたりを混同せず、用心していただきたい。
(ノンフィクションライター 窪田順生)