「民主主義の基本をわきまえていない」、分かりやすくアウト

「問題行動が多いけれど面白いからよい」とか、「アンモラルだけれど人気を集めているのだからよい」という考え方は昔からあった。しかし、その考え方が強まり、冗談で済まないところまで進んでしまったように見えるのが昨今の状況だ。

 これはひろゆき氏などのインフルエンサーにも言えることだが、むしろアンモラルだったり、ひんしゅくを買う言動があったりする方が信用できる人物であるという空気すら生まれている。

 参議院懲罰委員会で委員長を務める鈴木宗男議員は、ガーシー氏の処分について「民主的な手続きの選挙で国民から選ばれたことの重みを考えながら、手続きや段階を踏んで、きょうの除名に至った。ガーシー議員は、法律や規則があって成り立つという民主主義の基本をわきまえていない。慎重な手続きをとって結論を出したので国民の理解は十分いただけると思う」と語ったと報道されている。(NHK政治マガジン3月14日/ガーシー議員の「『除名』はショック」「民主主義の基本わきまえていない」から

 国民から選ばれた議員を「除名」するのは簡単なことではなく、ともすれば権力の暴走と言われかねない。実際、問題行動を報道されても辞職しない議員は多いし、その議員への辞職勧告は極力避けられている。

 しかし、今回のガーシー氏の行為はわかりやすくアウトのラインを超えた、ということだろう。これまで法や規則を守る範囲で「民主主義をハック」してきた立花元党首は、この事態をどう考えているのだろう。

 個人的な願いとしては、ガーシー氏の除名と逮捕状の請求によって、進みすぎてしまったように見える「モラルに反しても支持を集めればよい」という風潮が、少し修正されればと思う。

 現代にまん延する空気はもちろんガーシー氏だけの責任ではないが、この空気を象徴するような存在だったのがガーシー氏だったとはいえるはずだ。

 惜しまれるのが、このような中で議員のオンライン出席が議論されてしまったことだ。コロナ禍でリモートワークが進み、また、さまざまな状況で活動に挑む議員がいてしかるべきところ、議員のオンラインでの議会出席は真面目に検討されてよかったのではないか。

 オンラインを良しとするとガーシー元議員のようなことになるから……といった前例ができてしまったことは非常に残念だと感じる。