東北大学加齢医学研究所では、孤独感が脳に与える悪影響について検討がなされました。平均年齢約20歳の大学生776人を対象に、孤独感と脳の容積の関係を調べました。その結果、孤独感の高い人は知的活動に関する機能を担う前頭前野【図1】をはじめ、言葉や感情、表情の読み取りなどコミュニケーションに関わることが知られている幅広い脳領域の容積が小さいことがわかりました。この研究の結果から、孤独感の高い状態が続くと、共感や他人の気持ちを推し量るといったコミュニケーションに重要な役割を果たしている脳の機能が衰えていってしまう可能性があると考えられます。

【図1】コミュニケーションに不可欠な機能を支える前頭前野。【図1】コミュニケーションに不可欠な機能を支える前頭前野。言葉を話したり、相手の気持ちを推し量ったり、感情を制御したりと幅広い機能を持つ。(イラスト・祖田雅弘)
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 ではその手段が対面からオンラインに取って代わったとしても脳にとって影響はないのでしょうか。オンライン・コミュニケーションの方法には、様々なものがあります。メールやLINEなどのインスタントメッセージ、TwitterやFacebookなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)上でのやりとり、ZoomなどのWeb会議システムを用いたビデオ通話といった方法が利用されています。

 両者にはどのような違いがあるでしょうか?対面と比べて、オンライン・コミュニケーションは「楽である」という特徴があります。たとえば会議について想像してみてください。オンライン会議なら極端なことをいえば、上半身だけ仕事着に着替えてしまえば身だしなみは問題ないわけです。たとえ部屋が散らかっていたとしても、背景に画像を埋め込んで隠すことができます。会議が始まる5分前に目が覚めてさえいれば、準備が間に合うかもしれません。わざわざ会社へ出勤することも、会議室を準備して資料を印刷することも必要ありません。

 人間の脳は大変なことをしているときほど、負荷がかかって活発にはたらきます。あなたが楽をしているときは、脳も一緒になってサボります。サボり癖のついた脳は、あなたをどんどんと楽な方へと導いていくでしょう。コロナ禍に入って2年以上が経過し、オンライン会議に慣れた方も多いのではないでしょうか。オンラインでサボり癖のついてしまった脳をお持ちの方は、「対面の会議はもうやりたくないな……」と思ってしまったかもしれません。