インフレ・円安の時代に入った今、資産を預金だけで持つことはリスクがあり、おすすめできない。「先行き不透明な時代」には、これまで投資に無縁だった人も資産を守り・育てるために資産運用を始める必要がある。『このままではあなたの現金の価値が下がる! インフレ・円安からお金を守る最強の投資』(朝倉智也著、ダイヤモンド社)が3月29日に発売される。本書は、投信業界のご意見番が新しい時代を乗り切る「究極の運用法」をアドバイスするお金の入門書だ。大切なお金を守り増やすためには、どうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。

「まじめに貯蓄」しているだけでは、お金の価値が下がる時代。あなたは、どうしますか?Photo: Adobe Stock

預貯金しているだけでは、
大切なお金が大きなリスクにさらされる

 国が「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げはじめてから、かれこれ20年ほどの年月が経ちました。この間、資産形成を後押しするiDeCo(個人型確定拠出年金)NISA(少額投資非課税制度)などの制度が生まれ、運用するのに適した商品もずいぶん増えてきています。

 私は、投資信託の中立的な評価機関であるモーニングスター株式会社(現在はSBIグローバルアセットマネジメント株式会社)の代表として、長年にわたり個人投資家の方や投資を始めようとしている方に向けて情報を発信してきました。この立場から見て、資産運用をとりまく制度や商品、サービス等が年々よい方向に変化していることを感じております。

 2022年には岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」のもと、これまでのNISA制度が改正され、より多くの方の資産形成に資する内容になることも決まりました。

 しかし、残念ながら、これまでのところ「貯蓄から投資へ」「貯蓄から資産形成へ」という流れに乗っている人はまだ少数派と言わざるをえません。日本の家計には2000兆円を超える金融資産がありますが、そのうち半分以上を占める、およそ1100兆円が現預金に置かれたままなのです。

「投資」や「運用」という言葉に対し、「自分とは関係がないもの」「お金を大きく減らしてしまうかもしれない怖いもの」といったイメージを持ち、「まじめに貯蓄するのが一番だ」と考えている人も多いように思います。

 私は、このような状況に危機感を持っています。それは、「まじめに貯蓄」しているだけでは、皆さんの大切な資産が大きなリスクにさらされる状況がやってきたからです。

 確かに従来は、お金をまじめに貯蓄して預金に置くのも合理的な方法だったと言えます。日本では長らく物価が上がらず、「お金の価値が下がる」こともありませんでした。

 しかし、2022年に様相は一変しました。皆さんもすでに日々の生活の中で実感されていると思いますが、日本でついに物価が上昇し始めたのです。これは時代の転換点だと言ってもいいでしょう。

 物価が上がるということは、現預金に置いておくお金の価値がどんどん下がっていくことを意味します。今後、大切な資産の価値を守っていくためには、インフレに負けないくらいお金を増やさなくてはなりません。

 そのためには、これまでに貯めてきたお金をしっかり運用する必要があります。

 今や、資産運用と無関係でいられる人はいなくなったのだと言ってもいいでしょう。あるいは、「運用に回さなくてよいお金など、ほとんどない」と言ってもいいかもしれません。

「資産を守り増やしていくための一歩」を
踏み出しませんか

 もちろん、やみくもに投資に手を出せばいいというものではありません。自分の資産を管理し、運用してその価値を守るためには、適切な方法を学ぶ必要があります。

 本連載は、これから資産運用に一歩を踏み出すことを考えている方や、インフレ・円安に不安を感じ今後の運用方針をどうすべきか悩んでいる方、退職金や相続した資産などまとまったお金の管理を必要としている方を対象として、シンプルに実践できる資産管理の方法をご紹介していきます。

「資産管理の方法」と聞くと難しそうに思われるかもしれませんが、実際にやることはとても簡単です。

 まず、①今持っている金融資産の価値を保全するために安定的な運用を始めること。それに加えて、②長期的な目線で資産をしっかり増やしていくための積極的な運用も組み合わせること。この2つを実践すれば、皆さんの資産を守り増やすことはさほど難しくはありません。

 実は、今回ご紹介する内容の基本的な考え方は、私がこれまで長きにわたってお伝えしてきた考え方から変わっていません。私は常々、できるだけリスクを抑えながら長期的な目線で運用して資産を守り増やしていく「王道の投資法」を皆さんにご紹介してきました。

 この方法は、インフレでもデフレでも、円安でも円高でも、状況を問わずお勧めできる方法なのです。

(本稿は『インフレ・円安からお金を守る最強の投資』の一部を抜粋・編集したものです)

朝倉智也(あさくら・ともや)
SBIグローバルアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1966年生まれ。1989年慶應義塾大学文学部卒。銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事した後、1995年米国イリノイ大学経営学修士号(MBA)取得。同年、ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資金運用全般、子会社の設立、および上場準備を担当。1998年モーニングスター株式会社(現 SBIグローバルアセットマネジメント株式会社)設立に参画し、以来、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努める。SBIホールディングス株式会社 取締役副社長を兼務し、SBIグループ全体の資産運用事業を管掌する。主な著書に『全面改訂 投資信託選びでいちばん知りたいこと』『改訂新版 ETFはこの7本を買いなさい』『一生モノのファイナンス入門』(以上、ダイヤモンド社)、『「iDeCo」で自分年金をつくる』(祥伝社新書)、『お金の未来年表』(SB新書)などがある。