スイートスポットが広い走り味!
速く、操る楽しさが味わえるAWDスポーツ

 サーキット走行なので、VSCは“全OFF”でコースイン。GRヤリスの272psから304psに出力アップした1.6L直3DOHC12Vターボ(G16E-GTS型)はピーキーな特性になったと思いきや、印象は逆だった。最大トルクは370Nmで共通だが、ターボラグが抑えられたうえで実用域のトルクバンドが広がったような印象を受けた。2速か3速か悩むコーナーで、GRカローラは迷うことなく3速を選べる。それくらいの粘り強さだ。ゼロ発進からの加速力はGRヤリスとほぼ同等。高回転域の伸びはGRヤリスより頭打ち感があるので早めのシフトアップのほうが速く走れると感じた。

 フットワークは素晴らしい。ステアリング系はスポーツモデルにしては軽めの操舵力。ベース車でも定評ある第3世代EPS制御を活かしたスムーズでつながりのいい操舵フィールと直結感の高さ、そしてステアリングシャフトがひと回り太くなったかのような芯の強さが味わえる。

 車体の高い剛性はいわずもがなだが、ドイツ系のようなガチっとした印象とは違う。剛の中に柔(=しなやかさ)がある印象。ハンドリングはAWDらしからぬノーズの入りのよさとAWDらしいリアの安心感の絶妙なバランスが心地いい。ドライバーの操作次第でアンダーもオーバーも自由自在なコントロール性はGRヤリスと共通の美点だ。しかもGRカローラは、GRヤリス以上にクルマの動きが穏やかで挙動変化が予測しやすい。“スイートスポットが広く、多くのユーザーが安心して楽しめる”懐の深い走りに仕上がっている。

 勘違いしてほしくないのは、GRカローラが“ダル”、“鈍感”なわけではないこと。GRヤリスと比較すると、ややマイルドな印象を受けるが、それはGRカローラのキャラクターを考慮した味付け。クルマの動きにわずかな“間”、“タメ”ができたことが、“ドライビングの手の内感”を生んでいると感じた。

 乗り心地はサーキットなので断定はできない。しかし凹凸がある路面を通過した際の視線のブレ具合や、縁石に乗り上げたときの入力の優しさ、スッキリとした足の動きなどから判断して、かなりよさそうである。

 モリゾウエディションに乗り換える。こちらはサーキットに軸足を置いたモデルだ。パワートレーンはエンジンのトルクアップ(370→400Nm)に加えて、6速MTの1~3速のクロースレシオ化とファイナルのローギアード化を実施。フットワーク面は、剛性アップのために構造用接着剤追加(3.3m)とボディ補強ブレースを装着。専用セットの前後モノチューブダンパー、245/40R18サイズのミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2を採用。リアシートレスの2シーター仕様である。

 エンジンのトルクアップとギア比&ファイナル変更で、実用域はRZ以上にトルクフル。しかも回転が増すにつれてレッドゾーンまで一気に吹き上がる。ギア比のつながりもバッチリで、つねにパワーバンドをキープする。ただしシフト操作はRZより忙しい。iMTをフル活用したほうがシフトミスは少なそうだ。