これからの高齢者は「2000万円では足りない」事態もあり得る

 とはいえ、安心してはいられない。これからの高齢者には、2000万円どころではない老後資金が必要になる可能性も十分にあり得るのだ。

 家計の収支というのは、そのときの状況によって年々変わる。現在のような物価高騰が今後も続けば、毎月の支出は一気に跳ね上がってしまう。例えば、2023年4月以降の年金支給額は3年ぶりに増額となったものの、物価の上昇に追いつかず実質的には目減りすることになった。

 また、働き方の多様化を受けて、これから老後を迎える世代は、自営業者や非正規雇用者やフリーランスとして働いてきた人たちの増加が見込まれる。つまり、共働き世帯だとしても、夫婦両方で退職金や厚生年金が受け取れないケースも増えてくるのだ。さらには、平均寿命が延びてリタイア後の人生が長くなるほど、必要な老後資金も増えることになる。

 ライフスタイルの変化から生じる問題も見逃せない。例えば、持ち家に関する変化だ。くだんの報告書では、「かつては持ち家があることが当たり前であったが、持ち家比率も60歳未満は低下が著しい」としている。つまり、これからは賃貸住宅に住む高齢者も増えてくるということだ。

 上記で紹介した2021年の高齢夫婦無職世帯の家計収支において、住居費の占める割合は消費支出22万4436円に対して7.4%となっている。金額にすると1万6608円で、これは賃貸では考えにくい金額だろう。現在賃貸住宅に住んでいる人は、これから持ち家を買うにしろ、賃貸に住み続けるにしろ、住居費が必要な分支出が高額になると想定したほうがいい。また、持ち家ではあっても分譲マンションの場合は、管理費や修繕積立金や駐車場代などがかかり、意外に住居費が高くなるケースもあることを頭に入れておきたい。