文在寅前政権の中枢に
いかにメスを入れるか

さまよえる韓国人『さまよえる韓国人』(WAC)
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 尹錫悦政権は、李在明氏のカネや請託を巡る不正は摘発しても文在寅前政権の中枢にメスを入れることは控えている。文在寅前政権の蔚山(ウルサン)市長選挙を巡る選挙介入疑惑や2018年の南北首脳会談後、北朝鮮への原発建設を検討する内部資料の作成疑惑は黙認できる範囲を超えていると思う。しかし、現時点でその摘発に動くことは、文在寅前政権および民主党幹部との全面対決を招き、尹錫悦政権への弾劾の動きに発展しかねず、政権も大きなダメージを負いかねない。

 しかし、文在寅前政権が残した不適切な制度や慣行、人事は韓国社会改革のネックとなっており、いずれかの時点で改めざるを得ない。いかに文在寅前政権と対決していくか、尹錫悦政権の知恵と戦略が試されている。

(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)