その一方で、金利上昇によって投資した債券の価格が下落し、いわゆる含み損となって邦銀の体力を着実に奪っている。その状況について、昨年11月から今年1月にかけて公表された2022年9月末時点の地方銀行62行・第二地方銀行37行の半期ディスクロージャー誌(中間ディスクロージャー誌)より、特徴的な動向を紹介したい。
地方銀行・第二地方銀行99行の
1行当たりの「貯金」は約156億円
各行の半期ディスクロージャー誌には、保有する有価証券の時価情報が記載されている。掲載情報のうち、利息・配当やキャピタルゲイン目的で投資する有価証券を抽出し、市場における時価を貸借対照表上に計上する「その他有価証券」に着目した。
その他有価証券は、主に「株式」「債券」「その他」の3種で区分けされる。おのおのについて、時価が取得原価(=購入・投資時の原価)を上回る含み益のある有価証券の金額・差益と、取得原価を下回る含み損のある有価証券の金額・差損が表示されている。
これらについて、地方銀行・第二地方銀行99行の金額を合算した[図表1]。ひと言で言えば株式の含み益をそれ以外の含み損が減らし、全体としての含み益の合計は1兆5525億円となった。99行で単純に割った“貯金”は、1行当り156億8223万円となる計算だ。
含み損が含み益を
上回ったのは3行のみ
次に、その他有価証券の内訳別の動向を概観したい。最初に「株式」に着目する。
99行の株式の含み益と含み損を差し引きし、金額順で並べ替えた上で、上位および下位10行を機械的に抽出した[図表2]。
図表1で示した通り、全体として約3兆8400億円の含み益を保有するだけあって、99行中、ゼロの3行、マイナスの3行を除く93行の評価がプラスだ。上位10行のうち、第二地方銀行は9位の北洋銀行だけ、逆に下位10行のうち地方銀行は90位の東北銀行だけとなっていることが特徴的だ。北洋銀行も、1998年に旧北海道拓殖銀行から道内の営業を譲り受けているため、歴史や事業規模との一定の相関性が認められよう。