AT1債は株式と劣後債の間に位置付けられ、破綻時の弁済順位が低い分だけリスク・プレミアムが乗る。それゆえに、直接の社債投資のほか、グローバル運用などをうたう投資信託に組み入れられて投資していた可能性もあろう。
もちろん、特定の発行体絡みの信用リスクの低下のみならず、金利上昇による価格低下も見込まれる。昨秋以降の相次ぐ米欧の利上げは、直接的な価格低下をもたらすだろう。
地方銀行・第二地方銀行は
グループ化や増資を模索
含み損となった債券は、国内債・外債を問わず満期まで保有すれば全額で償還されるものの、取得価格に対して一定の水準まで価格が下落すれば、帳簿価格を引き下げて損失の計上が求められる。いわゆる減損処理だ。
米欧日が金融緩和からのシフトチェンジ、すなわち利上げをなお模索する中では、国内債・外債共に逆風と言わざるを得ず、減損に至る前に諦めて損失処理に踏み切ろうとする動きが見込まれよう。
その際の経営判断は、自己資本などの経営体力のほか、収益力による補填と対比することとなろう。そこで、その他有価証券の損益通算が赤字となっている地方銀行・第二地方銀行58行について、中間純利益を機械的に2倍して「1年分」とし、「稼ぐ力」の何年分の含み損に該当するのかを試算した[図表5]。
不良債権処理などの特殊要因によって中間純利益が赤字となったきらやか銀行と福邦銀行を除く56行のうち、18行が既に2年以上に膨らんでおり、10年以上も3行に及ぶ。従って、減損処理に当たっても各行経営者は慎重な匙加減を図っていることだろう。
今後、わが国発の信用不安を引き起こさないため、地方銀行・第二地方銀行はさらなるグループ化のほか、増資などの資本政策を模索することとなるだろう。
(オペレーショナル・デザイナー〈沼津信用金庫 非常勤参与〉 佐々木城夛)