感情を抑圧することも、大きな負担になります。たとえば、日本人の多くは、上司が仕事を丸投げする、休日にも出勤しなければならないほど仕事の量が多い、顧客がスケジュールを守らないなど、理不尽なことがあっても文句ひとつ言わずに働き続ける人がほとんどです。「会議が長引いてランチを食べられなかった」とか、「夜の接待が続いて朝起きるのがつらい」という話もよく聞きます。
そういう人に、何のために働いているのかと尋ねると、たいてい「生きるため」と答えます。
ストレスや疲労を抱え込まずにすんだら…
たしかに、生きるためには、働いてお金を稼がなければなりません。けれども、心身が疲弊して職場を去ることになったり、ストレス解消のためにタバコやお酒の力を借りなくてはならないとしたら、それはもはや、「生きるために働いている」のではなく、「働くために生きている」のです。そのことに気づいてはいるのですが、まじめで辛抱強い日本人は、仕事とはそういうものだから仕方がないと諦めてしまっているようです。
もちろん、無用なトラブルを引き起こさないようにしたり、他人を傷つけないように気を遣うのは大切なことです。仕事をしていれば、個人的な感情を表現することがプロフェッショナルとして不適切な場面もあります。
けれども、あなたがいやなことを我慢しているために、あなたの犠牲が周囲にまったく理解されず、いやな経験を何度も繰り返すはめになり、結果的にあなた自身が傷ついているとしたら、それこそ理不尽ではないでしょうか。ストレスや疲労をためこんでは解消するのではなく、はじめから抱えこまずにすんだら、仕事はもっと楽しく有意義になり、私生活はさらに充実するのではないでしょうか。
目に見えない感情や思考を手放すことは、特別な行為でも新しい方法でもありません。けれども、ちょっとした「コツ」を知っておく必要はあります。そのコツについて、今回の連載で紹介していきます。「手放す」ことは、気づきの機会を与えてくれる「知識」であると同時に、誰でも簡単に実践できる「技術」です。そして、実践すれば、私たちが快適に生きる手助けをしてくれる「道具」でもあるのです。
(次回は2月19日公開予定です。)
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