“いい声”を出すための
具体的な方法

 相手やシチュエーションに合った声が“いい声”、という定義は分かったが、具体的に、相手が心地よく感じ、場に相応しい声を出すには、どうしたらいいのだろうか。

「すぐにできる方法としては、相手の話すスピードやボリューム、話し方などをまねする『ペーシング』という方法が有効かもしれません。本来は訓練が必要なコミュニケーションスキルですが、相手に共感し、相手のことをよく知ろうと心がければ、ペーシングと似たように、自然と相手をまねた話し方ができるようになると思いますよ」

 では、オンラインでの会議やプレゼンなど、対話ではなく一方的に話す場合は、どうしたらいいのだろうか。

「自分の声を注意深く『聞く』ということです。社内でのプレゼンを例に挙げると、プレゼンを受ける上司の気持ちになって、自分自身の話し声を聞いてみましょう。すると『ボソボソしゃべっていると自信がなさそうな印象を受ける』『声も雰囲気も暗くて、この人に仕事を任せたいと思えない』など、自分の声を客観的に分析することができるのです」

 自分の声の課題が見つかったら、あとは“いい声”に近づけるために具体的な解決策を考え、トライするだけだ。

「明るい声を出したいなら、笑顔が肝心です。試しに、口角を下げた状態で『いいねぇ』と言ってみてください。次に、口角を上げて『いいねぇ』と言うと、明るい声になったと感じませんか? 明るい声は、明るい笑顔から生まれるのです。しかし、いつも明るい声だと、部下に注意をするときなどに真剣さが伝わりにくいという恐れも。威厳のある声を出したいときには、落ち着きがあり、胸に響くような声を意識するといいでしょう。ただ、どんな話し方にせよ、『腹式呼吸』と『明瞭な滑舌』はマストです」

 最後に、発声法と滑舌の、簡単なトレーニング法を教えてもらった。

「腹式呼吸は、息の瞬発力を高めるといいですね。『シュッ!』という鋭い息を連続して『シュッ! シュッ! シュッ!』と、おなかから吐くことを意識して、1日10回を目安にやってみてください。滑舌は、舌の筋トレがおすすめです。舌を前、右、左に出して、引っ込めてを10回繰り返すとか、唇と歯の間に舌を入れて左右10回ずつ回すなどで、舌の動きが良くなります。また、『ら行』は舌がよく動くので、『らりるれろ』と何回か言うだけでも効果的ですよ」

 基礎を押さえた上で、「自分がどう話すか」より「相手にどう聞こえているか」という意識で自身の声を観察してみると、改善点は見つかりやすい。今はオンライン会議の記録で自分の声を簡単に振り返ることもできる。自分の声をよく「聞く」ことで、どんな場面でも相手に好印象を与えられる“いい声”のビジネスマンを目指そう。