共働き世代が増えて感じる葛藤
人生後半が「すごく楽しみ」と語れるワケ

原田 今は仕事や育児、自分の時間など、バランスよくやれてますか?

山口 子どもが3人おりますので、今一番の優先は子育てです。20代はバリバリ仕事して、30代はその子育てと仕事の両立の難しさを学び、そして40代の今は、子育てをしっかりして、その合間にお仕事をさせていただくっていうのがメインになっています。

原田 僕らが通っていた幼稚園はクラシカルだったこともあって、ほとんどのお母さんは専業主婦で、お父さんは外で働く…というような家庭ばかりで、今の時代の共働き家庭とはギャップがあります。仕事と育児の両立は大変ではないですか?

山口 若い頃から仕事をしていて、仕事がもう体に染み付いてしまっているというか。子どもがいるから仕事やめようっていう選択肢は全くなかったです。昔は女性は専業主婦で子育てをして…っていう方が多かったのかもしれないんですけど、子育てが一段落してくると、働き始めようかなという人も徐々に増えている。人たちとの関わりを持とうかなっていう人が増えてきてるというのは感じます。

原田 僕ら団塊ジュニア世代は、ちょうどはざまの世代ですよね。上のバブル世代は男女雇用機会均等法の第一世代だったけれど、大都市部であれば、寿退社した女性たちも多かった。一方、団塊ジュニアより下の世代になると、共働きが当たり前になっており、ちょうどはざまの世代である我々は悩んだ人も多かったと思います。

山口 選択肢は(昔より)増えた気がしますよね。価値観が多様になって選択できるようになったと思います。

原田 (旦那さんの爆笑問題の)田中さんは、育児などお手伝いされる感じなんですか?

山口 そうですね。夫は58歳なんですけど、とにかく仕事仕事で、夏休みとかお正月休みとかも全然取らないですし、そうやって働くのが当たり前な世代。でも、やっぱり子どもが3人で、なかなか大変なので、結婚して8年目ですけど、やっと大変さをわかってくれて、時間があるときは手伝ってくれるように変わりました。

 今、男性の育児休暇が社会の課題になっていますが、実際皆さん取りにくいとおっしゃってます。ここ最近になって「育休は取っていい」「週末は子どもと一緒にいる」みたいなことが堂々と言える時代になってきましたよね。

原田 40代は割と子どもに比重を置くということでしたが、50代、60代、70代どう過ごしたいですか?

山口 すっごい楽しみにしてます。今100年時代と言われていて、50代は人生の半分、あと残り半分もあるわけじゃないですか。周りの50代の女性たちとかを見ていると、副業しようかなとか、新しい恋をしようか、やりたいと思ったことをやるんだっていう人たちが50代にすごく多いので。私も楽しみです。

原田 何かやりたいことはありますか?

山口 今は子どものことが一番メインなので、なかなかこれだっていうのがないんですけど。「芸能界やめて違うことをやる」とかって言うかもしれないし、「東京住むのをやめて地方行く」とか、そういう選択肢もありだし。自分がやりたいことが見つかったときに、それができるような状態でいたいな。

原田 芸能界ではない違った世界のお仕事で楽しむこともできるかもしれないですしね。年を取ることが楽しみっていうのはすごい前向きでいいですね。経済力や体力的な現実も踏まえて、確かに僕もこれから何をしたらいいのかなってのをよく考えます。このままでもなんか流せていけそうな気もするけど、最後の一踏ん張りもまだできそうで、エネルギーもあるしね。

山口 自分が何かしたいって思ったときに、自分の心がちゃんと判断できる状態にしてあげるっていうのが大切かなって思います。自分が何をしてるときが幸せか、そういうものを大事にしておきたいなと思いますね。せっかくの人生やらないで後悔するより、やって後悔した方がいいなっていうのはどこかにあって…。自分がやりたいと思ったものを信じて突き進んだ人が人生勝ちなのかな。

原田 「中年の危機」という言葉があって、ちょうど40代で、なんとなく自分の上限も見えてきちゃったりして、もやっとする時期なんですよ。だから50代、60代楽しみっていうのは、同世代にとってすごくエールになりますね。

対談を終えて~~原田曜平氏が感じたこととは?
 かつて「就職氷河期世代」や「ロスジェネ」と呼ばれた団塊ジュニア世代が、今、40代後半~50代前半になりました。いわゆる「中年の危機」という言葉がありますが、彼らはちょうど人生の折り返し地点に来ており、残りの人生をどう過ごそうか葛藤している人も多いかもしれません。

 団塊ジュニア世代は、バブルがはじけて、青春期に就職・転職に苦しんだ人も多くいます。会社に入っても上の世代に比べて管理職のポストや経費が減らされたり、出世や待遇に悩んだ人も多く、女性であれば、専業主婦文化と男女参画時代のはざまに置かれ、労働と結婚で悩んだ人も多くいます。そして今、「中年の危機」に差し掛かりつつある、言わば人生のほとんどを「葛藤」してきた世代といえるのではないでしょうか。

 今回対談させていただいて感じたのは、同級生である山口もえさんは、この時代的・世代的葛藤を一貫してゆるりとすり抜け、常に前向きに生きてこられたことです。「自分探し」がやたらとはやった団塊ジュニアの青春期。時代は急に不景気となり、非正規雇用が一気に増え、自分探しなどと言っている状況ではなくなり、自分の好きなことと仕事を合致させられない人がたくさん出ました。

 しかし、彼女は自分の大好きなダンス(自分らしさ)を入り口にするりと芸能界に入り、その美しさと天然的な親近感の感じられるキャラクターが受け若くしてパッと世に出ました。そして、人口が多く激しい競争にさらされながら生きてきた団塊ジュニア特有の競争力(彼女の場合は美しさと天然的な親近感が感じられるキャラクター)を発揮し、生き残りの厳しい芸能界を生き抜いてきました。

 時には葛藤や焦りもあったようですが、「これからが楽しみ」という彼女の前向きな発言に象徴されるように、やっぱり彼女は明るく前向きに残りの人生も捉えています。

 ぜひ、読者の皆様、特に団塊ジュニア近辺の世代の方々には、彼女の前向きで明るい人生を参考に、これまでの世代的不遇や中年の危機を乗り越え、彼女のようにワクワクするシニア生活を送る準備を始めていただきたいと思います。