日本人にはメンバーシップ型が向いているかもしれない、という意見もあります。メンバーシップ型の場合、新入社員は「基本的なことから教えること」前提として見られており、入社後はおじぎや敬語などを社会人として一から教えてもらえます。もしジョブ型が前提なら、入社した途端に「即戦力」としての対応を求めらることもあるでしょう。
またその場合は、大学の教育課程にも変革が求められます。大学を簡単に卒業させていては、学生が専門的な技能が身につかないまま社会に出ることになり、企業は立ち行かなくなるでしょう。一方で大学の制度段階から変革が進み、日本企業の全てがジョブ型雇用になれば、格差が拡大し、米国のように数%のエリートだけしか大学に通えなという社会になるかもしれません。
要は、働き方の変革の過渡期に選択肢が増えることはよいことでも、二元論に陥ってはいけないということです。今の時点でジョブ型やメンバーシップ型を完全否定することはできません。これまでいろいろなものを曖昧に取り入れながら、うまく乗り切ってきたのが日本社会の長所でもあります。
ダイバーシティにも
似た印象を持つ理由
その点でいうと、企業で盛り上がる「ダイバーシティ」(多様性)に関する議論にも危うさを感じます。たとえば女性の活躍推進というテーマについては、多様性といいつつ、なぜか女性は結婚して、子どもを2人生んで、キャリアアップして、管理職にもなって、家庭と仕事と両立させる、ということモデルケースが喧伝されていることが多いように見えます。。
多様性というならば、結婚しなくても、子どもがいなくても、シングルマザーでも、専業主婦でもいいはず。それこそ多様な選択肢があって、それぞれの働き方や家庭の支え方、ワークライフ・バランスが認められて然るべきだと思います。その意味で、ダイバーシティとジョブ型雇用の議論は似た印象を受けます。
結論としては、働き方にはいろいろあるので、そのときどきで考えて自分に合いそうな働き方を選べばいいということ。就活生がジョブ型とメンバーシップ型、そして通年採用に関する報道を見たときは、そのくらいの構え方でちょうどいいのではないかと思います。
(ダイヤモンド・ヒューマンリソース HD首都圏営業局 局長 福重敦士、構成/ライター 奥田由意)