流行りのジョブ型だけに
決めてしまう必要はない

 ここで、ジョブ型雇用にクローズアップしてみましょう。就活生にとって、もちろんジョブ型は選択肢のひとつとなりますが、その趨勢が本当に今後も続くのかどうかはわからないこと、単純に就活の選択肢を減らすのはもったいないことから、流行りといえども、ジョブ型の職種を設けている企業しか受けないと決めてしまわないほうがいいと思います。

 たとえば技術系の専攻課程にいる学生にとって、ジョブ型には決まった職種で働ける安心感があると思います。「電気系の学部を卒業したので、営業部門には行きたくない」という人がいたとしたら、ジョブ型で自分の行き先が見えていることはメリットと言えます。ただ多くの人にとって、本当にやりたいことが大学生のときのままかどうかは疑問です。むしろ入社して3年くらい経つと、やりたいことが変わっているという人のほうが多いのではないでしょうか。大学生の今の時点で自分の未来をガチガチに決めてしまうのは、リスクが高い行動です。

 前述のように、DX化が急務となっている企業はIT人材の採用難に苦慮していますが、そもそもDX担当という職種は永遠に必要なのでしょうか。これから技術が進歩して、システムやノウハウが低価格化・陳腐化すれば、DXは当たり前のものになり、社内に取りたてて専門の担当者を置く必要はなくなるかもしれません。

 古い喩えになりますが、1980年代に爆発的に普及した「家庭用年賀状印刷機」(リソグラフ)という商品がありました。当時は一家に1台あったといっても過言ではなかったのです。しかしコンピュータの普及、インクジェットプリンタの高画質・低価格化などの新たな潮流の中で、2000年代に販売が終了しました。

 また、以前はmixiといえば最先端のSNSでした。しかし、その座はFacebookやTwitter、Lineなどに取って替わられ、今ではFacebookやTwitterも一時の勢いを失っています。物事にはそのときどきの流行り廃りというものがあります。働き方の潮流においても、日本にジョブ型が根付くのか、一時の流行で終わるのかは誰にもわかりません。この数年の動きだけを見て、ジョブ型雇用やその反対の概念であるメンバーシップ型雇用の是非を議論するのではなく、もう少し余裕を持った見方をしてもいいのではないでしょうか。