近畿圏は大阪への一極集中化
中部圏はコストプッシュで郊外化

 このように、首都圏においてはコロナ禍の長期化によって社会構造が大きく変化し、賃貸ニーズの郊外化が発生して都心部の賃料が頭打ちになっている状況が明らかだが、他の圏域では首都圏とは異なる推移を示している。

 近畿圏ではコロナ禍に突入した20年以降も、移動人口は大阪府および大阪市への一極集中が継続しており、その影響で兵庫県および京都府は年間を通じて転出超過が続いている。つまり“大阪の独り勝ち”である。

 これは首都圏と違ってテレワークの実施率が低いこと(推計で10%程度との調査結果もある)、首都圏では都心と郊外の賃料格差が2倍程度と大きいが、他の圏域では格差が1.3倍程度にとどまるため郊外化する経済的なメリットが薄いこと、首都圏は圏域全体が広く、郊外方面に転居しても生活圏自体に大きな変化はないが、圏域が首都圏より狭い近畿圏は郊外方面に1時間程度転出すると生活圏自体変わってしまうこと、などがその主な要因として挙げられる。

 また中部圏では、中心地である愛知県だけでなく、名古屋市でも転出超過の傾向=郊外化が顕著になっている。ただし、これは消費者物価高騰が始まった22年春以降に目立つ変化であり、テレワークによる生活様式の変化によるものというよりは、生活コストの上昇が背景にあるものと考えるべきだろう。