ジャニー喜多川氏の「性加害」も多くが見て見ぬふり?

 冒頭に紹介した早稲田大学元教授のハラスメントについては、別の教授が「(原告の女性に)隙がある」という趣旨の発言をしたことにも賠償責任が認められた。二次加害について賠償責任が認められたことになる。

 また、先日BBCで報道され、4月12日には被害者の一人が記者会見を行った、故・ジャニー喜多川氏による未成年の少年たちへの性加害については、マスコミや関係者を含む多くの人が被害の実態を知りながら黙認し続けてきた疑惑がある。

 あるいは2月末に記者会見が開かれた、航空自衛隊内でのセクハラ事件については、被害を訴えた航空自衛官の女性が「会見に出ると、懲戒処分される懸念があるから」という理由で、記者会見に出ることができなかった。この女性は自衛隊内での被害を相談していたが、その後昇進が遅れたり、自衛隊内で行われた「セクハラ教育」の中で女性の被害が題材とされ、男性隊員は匿名とされたにもかかわらず、女性は実名が載せられたという。

 つい最近報道された記事をざっと見るだけでも、組織内でのハラスメント被害、性被害が、二次加害となりやすいことが見て取れる。

 このような状況を起こさないためにも、ハラスメント対応の徹底が必要であるし、問題が発覚した組織が被害者を黙らせることでそれを隠蔽(いんぺい)する力学が働かないような仕組みづくりが必要だ。

 繰り返しになるが、上下関係がある中で体罰や暴言、ハラスメントに遭ったことがある人は多いだろう。社会の中に確かに存在する声を上げる人への冷たさは徐々に改善されているようにも感じるが、もう一歩前に進めるために、それぞれの立場で自分の過去の被害とそれによる傷つきに向き合い、社会構造の問題として考えることが必要なのではないだろうか。