「幸福」を3つの資本をもとに定義した前著『幸福の「資本」論』からパワーアップ。3つの資本に“合理性”の横軸を加味して、人生の成功について追求した橘玲氏の最新刊『シンプルで合理的な人生設計』が話題だ。“自由に生きるためには人生の土台を合理的に設計せよ”と語る著者・橘玲氏の人生設計論の一部をご紹介しよう!

ジェフ・ベゾスはなぜ、毎日8時間寝ることを最優先しているのか?

 アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスはなぜ、毎日8時間寝ることを最優先しているのだろうか。それは、睡眠こそがもっとも効果の高い成功法則だからだ。

 近年の睡眠の科学は、次々と驚くべき事実を明らかにしてきた。寝不足だと仕事や勉強のパフォーマンスが下がり、身体的な健康やメンタルヘルスを害するし、アルツハイマー型認知症のリスクが高まるだけでなく、睡眠は記憶・運動スキルの向上やイノベーション(思いがけないアイデア)にも強く関係している。まさに「最強の自己啓発」なのだ。

 そしてここから、次のような重要な前提(資源制約)が明らかになる。

 1日は24時間ではなく10時間しかない

 まずは、この意味をじっくり考えてみよう。

ジェフ・ベゾスはなぜ、毎日8時間寝るのか? 睡眠は最強の自己啓発と言われる理由とは?イラスト:mstjahanara / PIXTA(ピクスタ)

眠らないと死んでしまう

 そもそもヒト(動物)はなぜ眠るのだろうか。じつはこれはずっと謎で、1970年代には「睡眠にはなんの役割もない」と大真面目に唱える学者もいた。

 だが、睡眠が必要なことは明らかだ。これは動物実験でも証明されていて、ラットを眠らせないと平均15日で死亡する。

 睡眠を奪われたラットは体中の肌がぼろぼろになり、足や尻尾も傷だらけだった。死後の解剖では、肺に液体がたまり、内出血があり、胃の内壁にはあちこちに潰瘍ができていた。肝臓、脾臓、腎臓などの内臓はサイズも重さも減少していたが、ストレスに反応する副腎は逆にかなり大きくなっていて、副腎から分泌されるコルチコステロン(不安と関係があるホルモン)の量が突出して多かった。

 研究者たちは、睡眠を奪われたラットの死因が、ラット自身の腸内にいたバクテリアによる敗血症であることを突き止めた。睡眠不足により代謝機能だけでなく免疫機能もまともに働かなくなったことで、通常ではなんの問題もないバクテリアが暴れ出して生命を失うことになったのだ。