資金運用行き詰まり「3つの要因」

 資金運用に行き詰まるファンドが急増している要因として、大きく3つ指摘できる。まず、米欧でオフィスの空室率が上昇している。テレワークや在宅勤務が増加し、かつてのように毎日オフィスに通勤する必要性が低下した。加えて、米国や中国ではリーマンショック後の景気回復をけん引したIT先端企業の業績が悪化し、リストラが進んでいることもオフィス需要を低下させている。

 次に、不動産の価値そのものも下落している。22年3月以降、米国ではインフレ鎮静のためにFRBが利上げを進めた。世界的に金利は上昇したことで、長期的に不動産が生み出すと期待される価値は押し下げられる。そのため、米国やユーロ圏では商業用不動産の市況が悪化している。中国やシンガポールでも、商業用不動産の価格下押し圧力が高まっている。

 さらに、多くの投資ファンドは、多額の借り入れによる運用を行ってきた。例えば不動産に1億円を投資し、10%のリターンが得られるとする。その場合の利益は1000万円だが、自己資金1億円に加えて10億円を借り入れ、10%のリターンが得られた場合には、計11億円の10%、1億1000万円の利益が手元に残る。それを狙って、多くのファンドが借り入れによってレバレッジをかけた。

 しかし、米欧の中央銀行が政策金利を引き上げるにつれ、資金借り入れコストは増える。加えて、商業用不動産などの価値が下落してもいる。ファンドからの資金流出も増える。

 一方、商業用不動産の流動性は低い。こうして、資金の調達(短期)と運用(長期)のミスマッチが深刻化し、資金運用に行き詰まるファンドが急速に増えているのだ。