韓国の主要輸出先が
中国から米国に回帰
韓国経済の成長エンジンであった中国との関係が転機を迎えている。その象徴的なものが、前述の通り、韓国の輸出の割合が1位の中国から米国にシフトしていることである。
政府と韓国貿易協会の統計によると、今年1~3月の韓国の総輸出のうち中国の割合は19.5%と、昨年の22.8%から大幅に減少した。一方、米国の割合は20年前の水準である17.7%にまで回復した(2011年には10.1%まで下がっていた)。対中輸出の空白を対米輸出が埋めた格好である。米国市場で自動車輸出が好調を続ければ、米国の割合が20年ぶりに中国を逆転する可能性もあるという。
尹錫悦政権はこれまで日米韓との同盟強化に乗り出してきたが、中国との関係では、中国の反発を意識して、米国の期待に十分応えてこなかった。韓国は高高度防衛ミサイルシステム(THAAD)の配備に対する中国の報復を目の当たりにしてきたからである。
韓国国内には、最大の輸出相手国が中国であり、中国を怒らせることによる経済的打撃を懸念する声が高い。また、北朝鮮の挑発を抑制する上での中国への期待も高かった。しかし、こうした中国との構造的問題に変化が起きている。
最近の中国への輸出減少と貿易赤字の増加は、韓国の景気悪化や特定品目の不振という要因のみならず、グローバルな貿易環境の変化が本格的に反映された結果だという分析が出ている。
長期化する米中貿易戦争や、世界経済のブロック化現象など、韓国の輸出動向に大きな変化が起きている。また、北朝鮮のミサイル発射に対する国連制裁強化を妨害しているのも中国である。
中国の圧力を低減させ、韓国が名実ともに西側の連携に加わるためには、日米韓がより強い結び付きを示し、中国が圧力をかけにくくすることが重要である。中国へ輸出比率が下がってきた現在は、そうした取り組みを強化するための良い機会である。
韓国経済の再生には
日米との関係強化が重要
韓国経済の再生のためには、日米との協力関係の強化が重要である。
日本との間では、尹錫悦大統領の訪日、首脳会談でその足掛かりを作った。
日韓の経済関係で象徴的なものは、半導体素材に関する韓国のホワイト国への復活であり、そのための条件を整備させるべく、日本も協力する必要がある。
尹錫悦大統領の訪日時には経団連と全経連がビジネスラウンドテーブルを開催し、韓国からは4大財閥の会長らが参加した。
日本商工会議所と大韓商工会議所の間でも、「首脳会議」の6年ぶりの開催に向けて実務接触が行われている。2025年の大阪・関西万博と、韓国が釜山への誘致を目指す2030年万博のプラットフォームなどでの連携も提案した。
朴振(パク・チン)外相の国会での答弁によれば、尹錫悦大統領の米国訪問では、「北朝鮮の高度化する核・ミサイル脅威に対抗し、拡大抑止の実行力を質的に強化する案を議論する」という。併せて、供給網(サプライチェーン)の安定化などの経済安全保障や人工知能(AI)、原子力、宇宙など、最先端分野での協力強化の方針を表明する予定である。
米韓首脳会談で韓国が期待するのは、北朝鮮への拡大抑止に合意することであるが、米国の期待は中ロと関連した韓国の「前向き」な対応である。中ロに対する米韓の連携強化によって米国の信頼を得ることは、経済面において米国の協力を得るために不可欠である。
尹錫悦大統領は米国訪問において「先端産業協力や未来の核心分野の交流に重点を置き、訪問都市を検討している」という。