トレーニング1【たとえば何?】
1つ目に紹介するのは、解釈する力や分析する力を育むことを目的としたトレーニングです。
「赤くて四角くいもの何がある?」のように、「赤」や「四角」など一般的なコンセプトの組合せの具体例(「ポスト」など)を子どもに出してもらいましょう。
1つ例が出たら「じゃあ、他には?」と違う例を出してもらいます。
もう例が出なくなったら、
「じゃあ、今度は速くて大きな動物は?」
など、違うコンセプトを変えて問いかけていきましょう。
子どもが慣れてきたら、より関連の希薄なコンセプトをくっつけたり(「うるさくて丸い」など)、コンセプトの数を多くして(「丸くて赤くておいしい」など)難易度を上げていくこともできます。
このトレーニングを通して、与えられたコンセプトの組合せを理解する力を伸ばせます。
また、当てはまるものをあれやこれやと探していくことで、評価する力や推論する力を芽生えさせる機会になります。
トレーニング2【共通点探し】
続いて2つ目も、解釈する力と分析する力のトレーニングです。
共通点の説明も必要なので、説明する力を育むキッカケにもなります。
具体的なものを2つ挙げ、共通点を探すゲームをやってみましょう。
たとえば、「リンゴとメロン、どこが同じ?」といったテーマです。
テーマを伝えたら、まず、子どもに共通点をいくつも挙げていきましょう。
挙がらなくなってきたら、
「両方あまいかな?」とか、
「両方大きいかな?」など、
共通点の候補を挙げ、子どもに当てはまるかどうか考えさせます。
慣れてきたら、より共通点がなさそうなものを比べてみましょう(「自転車とパン」など)。
共通点が明らかでない場合(「リンゴもメロンも緑色」)には、理解できたとしてもあえて「なんで?」と聞いてあげることです。
共通点の説明をさせることで、説明する力を育むキッカケづくりにもなります。
トレーニング3【ポップ・クイズ】
最後のトレーニングです。
本の読み聞かせやお話をしたときに、ストーリーの一部について質問していきます(「どうしてキジさんは桃太郎のお供をしたんだっけ?」)。
今、話した話題でなくても、以前の話を思い出させるのもOKです。
はじめは答えが明らかな質問をしましょう。
慣れてきたら、答えが明らかでなく可能性が複数ありそうなオープンエンドな質問をしてみましょう(「どうして鬼は村の人たちを苦しめていたの?」)。
子どもといろんな可能性をあれこれ話し、答えが定まらない問いがあることを示しましょう。
このトレーニングでは、質問に対し、あれやこれや当てはまるものを探すことで評価する力がサポートできるのと同時に、オープンエンドな質問で、推論する力も鍛えられます。また、答えを説明する力の発達も促せます。
以上、今回ご紹介した「3つのトレーニング」はいかがでしたでしょうか?
これらのトレーニングを組み合わせたり、少し改良したりして、子どもになじみやすいものがあれば、どんどん試してみてください。
またトレーニングは、スムーズにパッパとリズムよくできることが目的ではありません。
大事なのは、子どもが「哲学思考するのに適した機会」をつくることです。
子どもからうまい返事がなくても、少し時間がかかっても、子どもが考えている手応えが得られれば、トレーニングの効果が上がっていきます。
最初は慣れずにイライラしてしまったり、焦らせたりするかもしれませんが、やっていくうちに要領をつかんでいけるので、気長にリラックスしながらやっていきましょう。
明日は、スタンフォードから注目の人物との対談をお届けします。
今回紹介しきれなかった、さらに年齢が上の小学生や中学生にも効果的なトレーニング方法は、拙著『子どもの「考える力を伸ばす」教科書』をご覧ください。
なお、上記のような場面で、子どもとの良好な関係を築いたり、上手なコミュニケーションを図ったりする上で重要となるエッセンスは、拙著『スタンフォード式生き抜く力』で余すところなくお伝えしていますので、ぜひ参考にしてください。
【参考先】
*1. Abrami PC, Bernard RM, Borokhovski E, et al. Instructional Interventions Affecting Critical Thinking Skills and Dispositions: A Stage 1 Meta-Analysis. Review of Educational Research. 2008;78(4):1102-1134.