心の支えになるのは
同年代の知人・友人

 そこで頼りになるのが、同年齢の知人や友人です。

 私も同級生の「お互い大変だな」という一言に何度も救われました。「うちの親の場合はね」とか、「こんな制度があってね」とか、国や地方自治体の情報を知ることもできました。「自分だけが“老いた親の問題”に悩んでいるわけじゃない。同年代の共通の話題なんだ」と知るだけで心が休まります。

 個人的な話になりますが、私の母は2022年4月に転倒して腰椎を圧迫骨折してしまいました。

 その日は一緒に玉三郎さんの歌舞伎を観に行って、とても元気でした。ところが、その晩、トイレに立ったときに転倒し、救急車で運ばれて入院。入院中にせん妄が表れ、退院後もなかなか治りませんでした。目の前で変わりゆく母に向き合うのは辛くて。このまま“あちら側”に行ってしまうのか、と悲しくて、可哀想で、何をどうすればいいのかわからなくなりました。

 そこで散々迷った末、親の介護やケアをしている同級生や知人に、母の状況を相談。経験者の言葉はとても温かくて、力強くて。滅多にコンタクトを取っていないのに、一瞬で心と心の距離感が縮まりました。彼女たちが共通して言っていたことは、「案外さ、親もなんか元気になっていくんだよね~」ってことでした。

「うちの義母は大腿骨を骨折して、そのまま数日意識不明だったのね。ギプスも手術もできないのだけど、もともと認知症が進んでいたからなのか痛みが少ないようで。リハビリの末歩行器で歩けるまでになったのはすごいと思うわ」

「うちの母はもう一人暮らしは難しかったので、2年前に老人ホームに入った。そしたら急にボケちゃって、電話がかかってきて『家に帰らないと。お父さんが困ってる』って言われたときは絶句した。父は10年以上前に亡くなってるのにね。でもね、半年過ぎたくらいから結構回復してきて。まだらボケっていうのかな。よくわからないけど、結構楽しんでるみたい」

書影『50歳の壁 誰にも言えない本音』『50歳の壁 誰にも言えない本音』(エムディエヌコーポレーション)
河合薫 著

「うちの父は夕方くらいになると、ソワソワして家から出ちゃったりしてたのよ。夕暮れ症候群ってやつだね。デイサービスもいやがってたんだけど、ヘルパーさんと協力してなんとか連れていくことに成功した。そしたら楽しかったみたいで。夕暮れ症候群も治っちゃったよ。たまに出るときもあるけど、確実に頻度は減ったよ」

「認知症って、わからないことだらけみたいよ。うちの母は猫がいるってずっと言ってたんだけど、言わなくなったし。季節や月によっては、まったく問題ないときもある。子どもは心配するけど、本人的には、まあそんな日もあるさ、くらいなのかなって思うんだよね」

 などなど。

 人間には生きる力があり、人には無限の可能性があることを、老いた親たちが教えてくれたのです。そして、老い方は人それぞれで、子のかかわり方も人それぞれ。しかし、どんな形であれ子には、「親を思う気持ち」があった。この歳になるまで、自分でも気がつかなかったほど強い、親への愛情です。だからこそブレーキをかけてくれる「他者」が必要なのです。