宅配ピザは「激安キャンペーン」で
オーダーを巧みに操っている
それは、ピザを注文する理由の1位と2位が「割引キャンペーンがある」ことと「クーポン割引があること」なのです。
これがレギュラーの人をリピーターにする理由であると同時に、実は私のような準レギュラーをピザの注文から遠ざける一つの要因になっています。というのも、ピザは価格がいくらなのかわかりにくいのです。
具体例をお話ししましょう。ピザハットでピザを食べたいと思ったとします。それで出前館で注文をしようとしたら、まずメニューのトップに「Lサイズ半額セール」というキャンペーン表記があります。イメージキャラのカズレーザーさんが推す「元祖カズレーザー4」のLサイズが総額2590円で注文できます。ちなみにこれはお得です。
しかし、同じ商品をピザハットのウェブから宅配注文しようとすると価格が変わります。キャンペーンは「デリバリーピザ全品30%オフ」に変わって、価格も4170円になります。
そしてここもわかりにくいのですが、ピザハットのウェブで安く買おうとして持ち帰りにすると「持ち帰り半額」が適用されるのですが、価格は2980円。どうやら出前館とピザハットの店舗で、価格が最初から違うようなのです。
ドミノピザも同じで、たとえば牛すき焼きのMサイズを買おうとすると今度は出前館が一番高く、店頭からの持ち帰りが一番安い。買い方が違うと価格が違い、商品が違うとまた価格が違って、結局のところ得をしたのか損をしたのかまったくわかりません。だから私のような準レギュラー層は、ここで失敗してしまうのです。
ところがレギュラー層の人に言わせると、「私の注文の仕方が間違っている」というのです。宅配ピザは欲しいピザを注文するのではなく、最初に表示されるキャンペーンページのピザを注文すればいつだって一番安いのだというのです。
これは経営の観点で見ると、別の意味で理にかなっています。おススメのピザを設定してそれを激安にしておくと、そのピザの注文がオーダーの大半を占めるようになります。すると仕入れも在庫管理も生産性が上がります。
「ピザは何食べてもおいしいし、キャンペーンのやつならいつも激安だし、オーダーしたら30分で家に届くし」という考え方をする人にとって、いつも何らかの激安キャンペーンをやっていて、しかも熱々のうちに宅配がやってくるピザは生活のレギュラーメニューを占めるというわけです。
ここが、宅配ピザ業界の特殊な点です。
利用者の大半を占める顧客は、実はピザがいくらするのか厳密には知っていない。知らなくてもいつもお得なものを注文する習慣ができている。なので結果として、これはあくまで私の結論ですが、250円~299円程度の値上げはそれほど気にせずに、習慣を変えることもないのではないでしょうか。
これは、消費者アンケートから私が読み取ったあくまで戦略仮説です。読者の方にも値上げに苦労をされている方が多いと思いますが、値上げを検討する際の思考法の一つとしてぜひ、今回の考え方も参考にしていただければと思います。