学校推薦枠で生き残りを図る女子大と中堅大

 順天堂大は、埼玉県内最大級となる医学部付属「埼玉国際先進医療センター(仮称)」をさいたま市緑区に5年後をメドに建設予定としている。既存の病院施設を含め、大量の医療系スタッフ確保の必要性を考えると、高大連携による女子学生の確保は、経営戦略上も優先度が高いのだろう。

 やはり医学部など8学部を擁する北里大による女子校の田園調布学園、カリタス女子、東京純心女子、共学校の桜美林との高大連携は、同様に幅広い医療系人材の確保も加味しての動きとしてとらえられそうだ。
 
 ここ数カ月、女子大の募集停止発表が相次いでいる。恵泉女学園大(1988年開学)、神戸海星女子学院大(同65年)、上智大短期大学部(同73年)、実践女子大短期大学部(同50年)などで、2016年の東京女学館大の閉校以来、こうした流れに歯止めが掛からなくなっている。
 
 付属中高からの内部進学が4人に3人と多い日本女子大や女子美術大といったごく例外的な存在を除けば、進学校化した系列中高からの内部進学は望めず、どこの女子大も学生の確保に苦労している。すでに定員充足率が半分近くに低下している女子大も珍しくはない。こうした女子大は、共学の神戸親和大に改組したばかりの神戸親和女子大や共学・四年制に改組を進めている佐賀の短大のように生き残りを図るか、あるいは順次その歴史を閉じるかの岐路に立っている。
     
 いまから40~50年前、女子大の頂点に立っていた津田塾大や東京女子大は早慶に並ぶ難関だった。ところが現在、上位の女子大であってもMARCHと並ぶのがやっとだ。少子化と女子の共学志向の高まりという逆風もあって、学生確保のため中高一貫の中堅・中位女子校に学校推薦枠を気前良く与える動きが顕著になっている。

 東洋大学グローバルコースを設けている麹町学園女子とは東京女子大、共立女子大、女子栄養大が、玉川聖学院とは東京女子大と東洋英和女学院大が、桐朋女子と横浜女学院とは東京女子大が、それぞれ高大連携協定を結んでいる。この他にも、玉川聖学院は神奈川大、武蔵大、明治学院大が、横浜女学院は武蔵大、成城大、國學院大、明治学院大が協定を結ぶなど、中堅大が女子大を押しのけるようにして食い込んできている様子がうかがえるだろう。

 例えば成城大は、麹町学園女子、北鎌倉女子学園、佼成学園女子、共学校では芝浦工業大附属、西武学園文理とも協定を結んでいる。こうした中堅大は今後、入試における競争原理が徐々に働きにくくなっていくことが想定されており、高大連携協定は生き残りのための大切な手段となっている。

 この3月末に発表された東京農業大と國學院大の学校法人間の包括連携協定も興味深い。連携内容の筆頭に掲げられた「両法人に在籍する児童・生徒・学生の感性の涵養のための支援に関すること」は、つまりは系列校同士の連携、大学と高校がクロスしての進学も念頭に置いたものと考えられる。

 いずれの大学も6学部あるが、その分野がかぶらないことも大きい。系列校も、中高一貫化した東京農大の付属校が第一(東京・世田谷区)、第二(群馬・高崎市)、第三(埼玉・東松山市)にあり、國學院大は高校が東京と栃木に、中高一貫校の国学院大学久我山が東京・杉並区にあるといった具合で、地域的にもかぶらない理想のカップルである。

 とはいえ、多くの中堅大では、「どの私立大の現場でも、受験生を増やして入学定員を確保したい事務方と、これ以上自分たちの業務を増やしたくない教員側とで考え方が大きく異なっていた」(峰氏)のが実態であり、「高大接続」はまだ発展途上にある。

【訂正】 本文第21段落、初出時『付属中高からの内部進学が4人に1人』を、『4人に3人』に訂正いたします。
(2023年5月2日 21:07 ダイヤモンド社教育情報)