パワハラを苦にした従業員の自殺や品質検査不正が発覚した三菱電機は、社員の意欲を高めるために人事制度改革を断行する。特集『部長・課長の残酷 給料・出世・役職定年』の#6では、改革の中身や部課長の年収などを明らかにする。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
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品質検査不正などを起こして信用を失った三菱電機がこのまま凋落するのか、電機の“優等生”といわれたかつての勢いを取り戻すのか――。それを決めるといっても過言ではないほどの大改革が同社で断行されようとしている。
三菱電機は、2008年のリーマンショック後、携帯電話事業からの撤退といった構造改革を断行して業績を回復。電機業界ではトップクラスの利益をたたき出していた。
だが、その裏で、“昭和的な社風”に起因する問題が頻発していた。12年以降、パワハラや過労などで社員の自殺が相次いだ他、検査を十分に行わないまま製品を出荷する品質検査不正が長年横行していたことが発覚したのだ。
これらの問題の原因が究明される中で、本社と事業所間のコミュニケーション不全や社内の同調圧力の強さなどが組織の根本的な問題として浮かび上がった。
とりわけ深刻だったのが、従業員の意欲の低下だった。エンゲージメントスコア(会社への貢献意欲、他者への入社推奨などの質問に前向きな回答をした社員の割合)は、20年度に63%だったが、品質検査不正が発覚した21年度上期に54%に急落。その後の調査でも54%のまま一向に改善していないのだ。
しかも、これは全社員の平均値であって、20代後半から30代前半の若手社員の意欲低下が著しいという。
若手の意欲低下の原因は明白だ。バブル入社組が部課長ポストに滞留しているからだ。
三菱電機中堅幹部は、「品質検査不正で失った信頼を回復するため、中堅若手を中心に社内を改革しようというときに、部課長の人材の滞留は変革の機運をしぼませかねない。この問題に対する社内の危機感は強い」と内情を語る。
実際、中堅若手社員からなる社内変革プロジェクトの提言にも、「挑戦や成長を後押しする人事評価制度の構築」が盛り込まれており、部課長ポストの若返りが始まっている。
次ページでは、実は、部長、課長の年収はパナソニックや日立製作所に匹敵する三菱電機の待遇の実態や、管理職「若返り」を中心とした人事制度改革について明らかにする。