カナダの州政府による機敏な対応策も

 2014年、バンクーバー市では地価急上昇が大きな話題となり、「急上昇する住宅価格は中国大陸からの投資移民によるもの」とするニュースの見出しに注目が集まっていた。

 住宅価格の高騰がカナダ経済にもたらしたのは、住み慣れた町でマイホームは取得できなくなり、長年の生活圏からはじき出されてしまうという矛盾だった。

 2017年4月には、ブリティッシュコロンビア州とオンタリオ州で外国人への不動産取得税と投機税が導入された。政府による機敏な対応策だといえるが、2021年まで住宅価格は高騰が続いていたことから、これも焼け石に水だったことがわかる。その後カナダ政府は政策金利を引き上げ、今年1月からは「外国人は2年間の購入禁止」の措置を導入した。

 さて、日本の今に目を転じれば、多くの中国人が自分自身と資産の海外逃避先として日本の住宅市場に目を向けている。

 中国駐在経験を持つ不動産企業OBは「これまで中国の発展を信じて疑わなかった層がゼロコロナ政策を経て資産移転を始めているようだが、今後こうした層が日本の不動産市場に影響力を持ち始めるのではないか」と話す。

 一部の中国人は「日本は不動産に関わる税金と手続きが煩雑で購入は容易でない」と話すが、その一方で、「中国人は“不動産信仰”が強いため、こうしたハードルも簡単に越えてしまう」とする見方もある。中国マネーの日本の諸都市への影響は楽観視することはできない。

 一見豊かに見える上海だが、住宅バブルの犠牲者は少なからず存在する。上海市在住のLさんは「劣化した持ち家を買い替えたところで、病院もない郊外に住まなければならない」と今の生活に耐え忍んでいるが、東京をはじめとする主要都市でも、地元民が我慢を強いられる生活が現実のものとなるかもしれない。

 カナダではバブル退治に機敏な政策を打ってきた過去の歴史がある。諸外国では社会のグローバル化や多様化を推進しながらも、住民の安心安全を担保するための施策を矢継ぎ早に打ち出してきた。日本の国民にとって影響力のあるチャイナマネーも脅威だが、同時に「日本政府が有効な措置を講じられるのか」も心配のタネとなっている。