C部長はうなずき、自分が最も気になっていたことを質問した。
「当社は9時から18時までの8時間勤務ですが、A君は4日間、17時で退社しています。この場合4時間分欠勤したとして給料から差し引くことはできますか?」
「Aさんが昼休みにどんな仕事をしていたか確認してください。もし業務の遂行が認められれば労働時間になるので、この場合は欠勤控除をする必要はありません」
「分かりました。この件はB課長に確認してもらいます」
D部長はさらに尋ねた。「これからA君のように休憩時間に休憩を取らない社員が出てきた場合、会社はどう対処したらいいですか?」
〇 場合によっては休憩時間中の業務従事を禁止し、休憩を取るように業務命令を出す
業務命令を守らない場合は懲戒処分の対象になる可能性があることも説明する
〇 甲社の場合、事務所の社員が一斉に休憩時間を取っていること、全員が休憩できる休憩室が確保されていることから、原則職場への立ち入りを禁止し、業務上の都合により休憩時間に作業などを行う必要があるときは、許可制にすることも考えられる
休憩時間を変更したら、労働条件の不利益変更になるのか
「最後の質問です。B課長の話によると『1時間の休憩時間が長すぎる。短くしてもらい、その分早く帰りたい』と思っている社員が多いそうなんです。何か対処方法はありますか?」
「甲社の場合、休憩時間の長さについて事務所勤務の社員からアンケートを取る、意見を聴くなどした結果、時間短縮の要望が多く、なおかつ社内業務に支障がなければ、休憩時間を労働基準法で定めている45分間とし、終業時間を15分早めることは可能です」
「しかし休憩時間が短くなることは、労働条件の不利益変更にはなりませんか?」
「確かに休憩時間の短縮は不利益変更になりますが、労働時間や拘束時間が延びたり、賃金額の減少を伴う変更に比べたら、不利益の程度は小さいので、事前に社員の意見を聴いた上で実行すればいいかと思います」
E社労士は付け加えた。
「ただし、残業により1日の労働時間が8時間を超えた場合は、1時間の休憩が必要になります。あらかじめ残業することが確定している場合はその日だけ昼休みを1時間にするか、もしくは残業に入るときに15分の休憩を取らせるかなど、追加で発生する休憩時間の付与方法を会社で決めておいてください」