イノベーションの創出をめざす武田薬品発のサイエンスパーク「湘南ヘルスイノベーションパーク」(湘南アイパーク、神奈川県藤沢市)。今年5周年の節目を迎え、今後はより一層「不動産ビジネス」の色合いが濃くなりそうだ。
4月1日から湘南アイパークの運営会社が変わった。もともと武田が担っていたが、入居するテナントから「武田に情報が流れないか」という抵抗感や、利益相反の観点から患者団体との連携が難しいといった課題があった。ひとつの製薬企業が運営するには中立性の観点から限界があり、新会社の「アイパークインスティチュート」にバトンタッチした。
この新会社では株式の36.5%を武田が保有。社長は「湘南アイパークの顔」として開所からジェネラルマネジャーを務めた藤本利夫氏が就任した。30人ほどいると見られる社員も、ほとんどが武田からの転籍者だ。一見すると、これまでどおりの運営を継続するような体制が整っている。
しかしながら、湘南アイパークには「裏ミッション」が課せられている。実はこの建物の目の前に、JR東海道線の新駅「村岡新駅」(仮称)の32年の開業が決まっているのだ。周辺地域の都市開発は神奈川県や藤沢市、鎌倉市を巻き込んだ一大プロジェクトとなり、湘南アイパークは村岡新駅のシンボルとなる計画が進んでいる。
そして、村岡新駅周辺の都市開発に水面下で触手を伸ばしているのが三菱商事だ。アイパークインスティチュートに資本参加したほか、本誌の取材では周辺地域の不動産をひっそり取得していたこともわかった。湘南アイパークの成功とは「サイエンスパーク」だけでなく、村岡新駅周辺の「地価」を上げられるかどうかも試されるようになっている。