「仕事の内容や職場環境が原因で病気・体調不良を患った、あるいは持病が悪化した場合、その原因は何だと思うか」との問いに対し、1位は「上司・同僚・部下など社内の人間関係が悪い」(17.8%)。次に「勤務形態・勤務時間が不規則」(11.5%)、「残業・休日出勤が多い」(11.1%)、「仕事のノルマが厳しい」「過度にデスクワークが多い」(ともに9.1%)、「パワハラやセクハラがある」(8.3%)と続いている。
私の部下に、うつによる長期離脱から見事に生還した者がいる。30代後半の独身、実家から通い、趣味は映画鑑賞というごく一般的な行員だ。温厚で真面目、丁寧、几帳面な性格で、献身的に業務を遂行すると前任店の人事評価レポートに書いてあったが、今ひとつ特徴が見えてこない。
彼女は前任店でうつを発症し、復職を機にみなとみらい支店へ異動してきた。詳しい原因までは知り得なかったが、前任店は雰囲気が悪く、他人のことなど無関心、そのような中で彼女に業務が集中し、オーバーワークになっていたようだ。発症から2年という時間は、本人にとって長かったのか、一瞬であったのか…。
数カ月間の厳しい状況の後
表情や声が劇的に変化
復帰初日と本人が設定した日に、彼女は出社してこなかった。翌日も、同様だった。そのまま、一週間が過ぎた。翌週のある日、彼女は出社してきた。汗だくで、焦燥し切っている。明らかに、何かと戦っているような様子が見て取れた。
その日の彼女は配慮勤務に該当し、午前中で退社となった。配慮勤務とは、妊娠中や出産後、子どもの養育や親の介護などにも適用される制度である。
翌日の早朝、彼女からの電話が鳴った。彼女は体が動かないと訴え、出勤はかなわなかった。それから2カ月あまり、一進一退の状況が続いた。幸い周囲のメンバーは心優しい者ばかりで、彼女の境遇を理解していた。心ない言葉を発することはない。同僚の理解がいかに大事かということを痛感した。
そのようなフォローも功を奏したのか、さらに2カ月ほどたったある日、彼女の表情が急に明るくなったことに気づいた。私は課で最も早くオフィスに入り、開店の準備をしながら部下の出社を迎える。