オーディション決勝で野性爆弾と戦うも30対0の大敗北で引退。その後、4年間のニート生活、7ヵ月の家電販売員生活を経て、25年来の幼なじみと起業。創業以来18年連続増収増益、年商140億円、Financial Timesが選定する「急成長企業未上場日本一」、ベストベンチャー100、経済産業省認定「地域未来牽引企業」などに選定された、スプリーブ(Suprieve)ホールディングスをご存じだろうか。社長は4年間、お笑い芸人として活動した森武司氏。
急成長の一因に、話題のベストセラー『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』(木下勝寿著)の存在があったという。今回も同書の「やる気に頼らず楽しみながらできる」45法則のうち、森社長が「これは効いた」「とにかく沁みた」と大絶賛する10の法則をピックアップして紹介。7回目は、うまくいっている社長が「開発」より「採用」より大切にしていることに迫ろう。(構成:橋本淳司)
「ボールペンより鉛筆を探す法則」とは?
森武司(以下、森):『時間最短化、成果最大化の法則』の中で木下さんは、宇宙開発の寓話を紹介しています。
宇宙の無重力状態ではボールペンは使えない。
そこでNASAの優秀な科学者が10年の歳月と120億ドルをかけて宇宙で使えるボールペンを開発した。
一方ロシア(ソ連)は鉛筆を使った。
これが「ボールペンより鉛筆を探す法則」。
僕の会社では「車輪の再発明はやめよう」とも言っています。「車輪の再発明」をしても勝てるわけがないので。
――「車輪の再発明」というのは再利用できる既製品があるのに、わざわざ自前のものをつくるのを戒めるときに使いますね。
森:エンジニアにとって開発は楽しいですし、自社のソフトウェアは自分が一番わかっているという想いも強い。
自分でゼロからつくりたいという欲求はとても強いので、「ボールペンより鉛筆を探そう」「車輪の再発明はやめよう」と経営者である僕が、口を酸っぱくして言い続けなければ回避できません。
お金と時間をかけてゼロからオリジナルのプログラムを使ってみたものの、9割はエクセルでできたというケースはたくさんあります。
エクセルで9割つくって、1割だけプログラムを組めばいいわけですから、その損失たるや計りしれません。
――うっかり「宇宙で使えるボールペン」の開発に足を踏み入れてしまったことはありますか?
森:恥ずかしながら、人材管理ソフトを開発したことがあります。
勤怠管理、エリアごとの時給管理、残業手当などを一元的に管理するソフトウェアです。
当社は従業員が多いので、2年がかりで入力作業を行い、不具合を調整してようやく使えそうという段階なったとき、別の役員から「今、開発しているものって、これと同じじゃないんですか?」と言われました。
「えっ?」という感じでしたが、月額2万円で同じことができたんです。
開発するより
まずやるべきこと
――手痛い失敗ですね。
森:金額は2000万から3000万円かかりましたが、それより時間が本当にもったいなかったと思います。
おそらく世の中にないものって、ほとんどなくなっています。
ゼロから宇宙で使えるボールペンをつくるのはナンセンスな時代になってきたのかもしれません。
――そういう時代にどんな姿勢が求められますか?
森:開発するより、まずは徹底調査です。
事業の設計図はベースの15点くらいまでは簡単につくれます。
業界1位から5位の会社がやっていることを異常なくらい分析すればいいからです。
上場企業ならあらゆる数字が開示されているので、この事業で○億円の売上をつくる場合、人員はこれくらいで、利益はこのくらいとわかります。
新規事業の答えは、企業のウェブサイトや会社四季報に落ちています。
それをゼロからやるのは時間がもったいない。
たとえば「派遣会社のつくり方」のような本を買ってきて、ゼロから考えるのはナンセンスです。
―――宇宙で使えるボールペン開発は、もしかすると昭和時代の「プロジェクトX」なのかもしれないですね。あの時代はゼロからのモノづくりにロマンを感じる人が多かったのかもしれませんし、今でもその時代を引きずっている人がいますが、時代はすでに変わってしまっているかもしれません。
森:そうですね。インターネットがない時代と、ある時代では大きく変りました
―――「ボールペンより鉛筆を探す法則」はおもに開発分野で当てはまるのかと思っていましたが、人材についてもいえることがあるのだとか?
森:新規事業をスタートする際、他社のエキスパート人材を採用させてほしいということがあります。
でも、いくら他社で実績を上げていても、実力は未知数だし、当社の風土に合うかわかりません。
そういうときに社内のメンバーの顔を思い浮かべてみるんです。
「いや、ちょっと待て。それはAさんとBさんにタッグを組んでもらったらできるんじゃないの」と。
人を鉛筆にたとえるのは失礼かもしれませんが、一人のスキルではできなくても、別の人とのスキルを組み合わせればできることは結構あります。
――Cという能力が必要なので、その人材を採用しようというのではなく、Cという能力はAとBに分解できるから、社内のAさんとBさんでできるじゃないかということですね。人を見る目が素晴らしい。
森:求めているものを分解するというのは大事ですね。
人だけでなくソフトも同じようなことがあります。
いつも思うのは、エクセルをベースにしながら別のものと組み合わせると、だいたいのことができてしまいます。
ゼロからすべてをつくろうするのではなく、エクセルと既存ソフトで9割できたので、1割だけ外注したこともあります。
それで経費は10分の1になりました。
『時間最短化・成果最大化の法則』は共感するところが多く、新入社員や若い人たちからベテラン社員、社長まであらゆる人たちに読んでほしいです。
とくに、「ボールペンより鉛筆を探す法則」をこのタイミングで熟読しておくと、今後の伸びが劇的に変わってきます。極めて重要な法則ですので、本書で詳しく学んでみてください。
森 武司(Takeshi Mori)
スプリーブ(Suprieve)ホールディングス代表取締役CEO
Financial Times「急成長企業 未上場 日本一」
「ベストベンチャー100」受賞
経済産業省認定「地域未来牽引企業」
創業以来18年連続増収増益
1977年大阪生まれ。高校卒業後、NSC吉本総合芸能学院入学。4年間お笑い芸人として活動しオーディション決勝で野性爆弾と戦うも30対0の大敗北で引退。ショックを受け、そのまま4年間ニートとなる。長期間のニート生活から就職が難航。苦難の末に入った家電量販店で販売員をするも7ヵ月で退職。それを機に幼稚園から小中高と幼なじみで25年来の友人を誘い起業(わくわくエッサ有限会社)。金なし、コネなし、高卒、4年間ニート生活など、いわゆる社会的弱者ながらゼロから起業(2005年)。現在、13事業で年商140億円まで伸ばしている。採用基準に“友達になれそうな人”を掲げ、新卒社員を1年で1000名採用。化粧品、人材派遣、広告代理店、美容、ART、YouTubeなど関連のない13事業すべてを黒字化するまで育てるマーケティング戦略に注目が集まっている。何も持たない負け組でも、25年来の仲間と起業して成功できる“仲間力アップマニュアル”を再現性のある形で確立。幼稚園から40年来の友達が役員。