ロビーに長期間置かれ
ホコリをかぶったのぼり

 2020年9月1日、マイナポイント事業の第1弾が開始された。マイナンバーカードを取得したうえで、事前に選んだ決済サービス(Suicaなどの電子マネー、○○ペイといったキャッシュレス決済、クレジットカード、デビットカードなど)で買い物をすると、利用金額の25%、最大で5000円分のマイナポイントが付与されるものである。そのマイナポイントは、のちにその決済サービスで使えるポイントになる。

 送り元は本部の所管部署だ。こんなことまで銀行が協力しなくてはならないのか…。「ロビーの目立つ場所に設置しろ」と通達に書かれているものの、満足に置けるスペースがない。所管部署に電話し指示を仰ぐ。

「目黒課長、わかってくださいよ。全店に配置しろと言われてるんですよ。通達に書かれたマニュアル通りにやってください。会議室に長机くらいあるでしょ?それをロビーに置いて設置してくださいよ」

「しかしですね。長机を置いたらお客さまの動線が悪くなって、混雑時には苦情になりますよ」

 本部もその程度は理解していると思うが、消防法では通路に避難の支障になる物が放置されることを禁じている。また、建築基準法では通路に一定の幅を保つことが定められている。

「課長!マイナポイントの付与期間は来年3月末まで。期間限定キャンペーンみたいなもんなんです。あと数カ月で終わりますから、ちょっとは我慢してくださいよ。今後この端末は、郵便局とか市役所とか公共の場にも置かれるんです。うちだけが設置してないとわかったら、それこそSNSとかで非難されますよ」

 そんなものなのか。短い間の辛抱ならばと、渋々言われた通りにした。ところがマイナンバーカードの普及は思った通りに進まず、キャンペーン第1弾の期間は2度も延長し、ようやく2021年12月31日に終了した。

 しかし切れ目なく、2022年1月1日からは第2弾が開始。元々あった5000円分付与に加え、健康保険証とひも付ければ7500円、自分の銀行口座とひも付けるとさらに7500円、合計で2万円を付与することになった。マイナポイントの申し込みは2023年5月末までだったが、9月末までに延長された。その長机はロビーに鎮座し続け、のぼりはすっかりホコリをかぶってしまっている。