性被害を笑いにしてはいけない
大人こそが「性的同意」を学ぶべき理由
前述のケースでは、説明するまでもなく「性的同意」が取られた形跡がない。むしろ、性的同意がない性的行為を面白がって放送したように見える。たとえ「やらせ」であったとしても、性被害を笑いにしたことは事実だ。
該当の番組は「保護者が子どもに見せたくない番組」としてよく名前が挙がっていたと記憶するので、批判は当時からあったはずだ。しかしそれは、一部の口うるさい人によるクレームだと封殺されていたのではないか。
番組自体が人気だったのだろうから、批判の声は大きくなりづらかっただろう。社会の中で、このように男性の性被害や性的同意の重要性が著しく軽視され、エンタメとして消費されてきた。多くの人がこのような番組を娯楽として楽しんでいた。※ここでは男性の性被害に限って触れているが、当時の番組の中では女性の性被害についての軽視や、女性の裸体が性的なエンタメの素材として使われることも少なくなかった。
先日の、SHELLYさんによる国会でのスピーチは、次のように続く。
「夫婦だから。付き合って長いし。もう我々はツーカーだから。言葉でいちいち確認するなんてそんなの粋じゃないよ。ムード壊れるじゃん。って思われている方が加害者になる可能性があるので気をつけていただきたいと思います」
「性的同意と言えば、『No means No』。みなさん聞いたことがあると思います。
ただ、実はこれももう一昔前の話です。今は『YES means YES』 。Yesのみが同意、という理解が進んでいます。
『したい』『したいよ』という積極的な同意のみが同意と捉えられるというのが今、世界的な理解になっています。『嫌よ嫌よも好きのうち』という言葉も、もう現行の法律ができた明治時代の話ですので、そんなことを言って被害者を傷つけたり増やしたりするようなことはもうやめましょう」
繰り返しになるが、今の成人している人で、十分な性教育を受けたと言える人は少ないだろう。さらに人気番組では性的マイノリティーや性被害者への偏見をあおるような「逆教育」がなされていた。だからこそ、いきなり「性的同意」と言われて戸惑ったり、反発を覚えたりする人がいてもおかしくはない。
しかし性被害が軽視され、エンタメ扱いされてきた過去を振り返れば、大人にこそ性教育が必要だという話に納得がいくはずだ。