東海道新幹線の運転を
制御する仕組みとは
まずは東海道新幹線の運転の仕組みから説明する必要があるだろう。手動運転にせよATOにせよ、列車はATC(自動列車制御装置)と呼ばれる信号保安装置に従って走行する。
これは線路上を走行中の列車位置を検知し、列車ごとにカーブやポイント、先行列車との間隔に応じた制限速度を常時設定、監視する仕組みで、速度を超過しそうな場合は自動的にブレーキが作動する最も安全性の高い信号方式だ。
運転士はこの制限速度以内で運転操作を行うが、一般的な鉄道では各駅停車、急行といった種別ごとの違いあれど駅間の運転速度は概ね一定だ。ところが東海道新幹線の場合は例えば同じ「のぞみ」であっても走行速度が異なるため、ある区間を時速何キロで走るというような基準は特に定められていないという。
唯一の基準となるのが次駅の到着時間で、運転士は速度と距離から所要時間を計算しながら、ダイヤごとに定められた通過時刻、停車時刻に過不足なく合わせていく。アバウトに感じるかもしれないが、これで1列車当たりの平均遅延時分0.9分(2021年度、自然災害による遅延を含む)という圧倒的な定時性を確保している。
一般的なATOは、あらかじめ基準となる駅間の運転曲線(行うべき運転操作)をプログラミングしておき、それに沿って加速、減速、停車を自動で行うが、東海道新幹線のATOは基準となる運転曲線を持たない。
ではどのように制御をしているかというと、まず数キロおきに設置されたトランスポンダ(地上と車両で送受信する装置)から現在位置を取得・補正し、車輪の回転数から距離を算出。勾配やカーブ、橋梁(きょうりょう)、トンネルなど線路条件を記録したデータベースと現在位置を参照し、0.1秒ごとに次駅に定時到着できるか計算し、運転曲線を随時、再作成して速度を調整する。
ただ速く走るだけでなく乗り心地を考慮したり、時間に余裕がある場合は省エネのため速度を落としたりする機能も持つ。
このATOが真価を発揮するのは臨機の対応だ。開業から60年近くが経過した東海道新幹線では毎日、さまざまな個所で保守作業を行っており、その都度、臨時の徐行運転を行っている。また降雪時、車体に付着した雪が氷の塊となって落下し、バラスト(線路の砂利)を跳ね飛ばす事故を防ぐため、関ケ原(岐阜羽島~米原間)で速度制限が実施されることがある。
しかし徐行運転を行うと、その分、到着時刻は遅くなる。そこで遅れを取り戻すために前後の区間で通常より速度を上げ、遅れを相殺する。
報道公開でも走行中、静岡駅の手前に臨時徐行区間を追加設定するデモンストレーションが行われ、時速250キロ程度で走っていた列車は最高速度の時速285キロまで速度を上げ、ほぼ定時で静岡駅に到着した。なお、解消できないほどの遅れが生じた場合は可能な範囲で遅延を減らすように制御するという。
自動運転を開始する2028年まで、5年も待つのはもったいない仕上がりと感じたが、気象条件や異常時などさまざまな条件を想定してブラッシュアップをしていくそうだ。