アステラス製薬が過去最高8000億円の買収、不運の連鎖を断ち切る「大博打」の全貌Photo:Diamond
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 今年の大型連休は平日の5月1日と2日に有給休暇をとれば最大9連休となり、帰省や旅行に出かけた人も多いと思う。その大型連休の真っただ中にアステラス製薬が“サプライズ”を発表した。眼科領域の治療薬を開発する米アイベリック・バイオ(ニュージャー州)の買収で、5月1日の午前8時に発表。日本ではあまり知られていない企業の買収のうえ、連休中の早朝で寝ていた記者もいたようだが、買収額がアステラスとしては過去最高額の約59億ドル(約8000億円)というのを知り、一気に目が覚めるニュースだった。

 アステラスの岡村直樹社長CEOは急遽、午前11時からオンライン記者会見を開くと、買収の戦略的意義を約1時間にわたり説明。アイベリックが米国で承認申請中の加齢黄斑変性の開発品を獲得するのが狙いで、主力品である前立腺がん治療剤「イクスタンジ」の特許切れによる売上高減少を補えると期待した。イクスタンジの23年3月期の売上高は約6600億円で、連結売上高の4割強を占める。が、27年頃から特許切れを迎え、後発品の参入で収益激減が予想されており、ポスト・イクスタンジの新薬をどう揃えるかが、目下の経営課題となっている。

 4月に社長になったばかりの岡村氏は、就任早々からトラブルに見舞われてきた。まず副社長となり岡村氏を支えるはずだった菊岡稔財務担当(CFO)が突然、「一身上の都合」を理由に退任。社長就任直後からCFO不在という異例の船出となっている。さらに3月末には中国当局が社員をスパイ容疑で拘束する事件が発生。早期解放に奔走するとともに、20年代後半に2000億円規模をめざす中国事業に水を差された。

 相次ぐトラブルから「運のない社長」と不名誉な呼称さえ囁かれる岡村氏だが、今度は大型買収というサプライズである。果たして、このサプライズは「吉」となるか。