誰だって叱られることは好きではありません。できれば避けたいもの。
とはいえ、ミスや失敗をしたら、叱られてしまうことはあるでしょう。
中には厳しい口調の人や、パワハラとも思えるような態度で説教する人も…。
怖い人からのお叱りでメンタルをやられてしまわぬよう、「落ち込まない叱られ方」を知っておきたいもの。
もっといえば、叱られることで成長するくらいのタフさも身につけたいところです。
そこで、30代で経営者歴10年以上、『20代が仕事で大切にしたいこと』著者の飯塚勇太氏に、「心を病まずに上手に叱られるコツ」について伺いました。
(編集/和田史子)

書籍『20代が仕事で大切にしたいこと』の著者が教える、「心を病まずに上手にしかられるコツ」とはPhoto: Adobe Stock

誰もが知りたい!
上手に叱られるコツ

しかられるのが好きな人はいません。
それでも、社会に出ると確実に、叱られる場面がやってきます。
ですから心の準備をしておくに越したことはありません。

上手に叱られるには、コツがあります。
叱られているときに上司からかけられた言葉を、「心」ではなく「頭」でとらえることです。
「何を言われているか」だけに着目しましょう。

上司から叱られたとき、その言葉を心でとらえてしまうと、どうなるでしょうか。
「怖い」とか「嫌われたのかな」とか「なんだよ、自分だってできてないくせに」といった具合に、思考が「叱られたこと」そのものにとらわれて止まってしまいます。
相手に自分の感情を支配されてしまっているともいえる状態です。
そうなると、前向きな改善に移りづらくなるどころか、その後に上司と継続的な関係性を築くことすら難しくなってきます。

そこで、叱られたら「頭」でとらえるのです。
「何を言われているか」だけを理解して、冷静に分析・改善しましょう。

なんなら、「誰」が言ったかも忘れてしまってもいい
上司の言い方がきつい、目が笑っていないなどは、気にすることはありません(気のせいかもしれませんし)。

自分がスマホ(の音声読み上げソフト)になったとイメージして、相手の言葉(音声)を頭の中でテキスト変換するのです。
すると、「なるほど、こういうことを言っているのか」と、冷静になれます。
そして、上司に対して必要以上に恐怖を感じることも、「なんだよ」と怒りを覚えることもなくなります。

自分がスマホ(の音声読み上げソフト)になったとイメージして、相手の言葉(音声)を頭の中でテキスト変換するPhoto: Adobe Stock

私は複数の会社の社長であり、サイバーエージェントの専務執行役員でもありますが、いまだに叱られます。
恥ずかしながら「前に指摘したのに、なぜ直していないんだ!」といった初歩的なことで、私だって叱られたりすることもあります。
私をしかるのは、私の上司。つまりはサイバーエージェントの役員です。
役員に叱られると、たいていの社員はビビります。その社員たちから、私は「飯塚さんは、役員に怒られてもひょうひょうとしていて、すごいですね」と、不思議な尊敬をよく受けます。

しかしそれは、私のメンタルがタフなわけでも、上司のお叱りを私が「右から左へ」と受け流しているわけでもありません。
上司のお叱りを「頭」でとらえ、何をどう改善すればよいかを考えている。感じるのではなく、考える。ただそれだけなのです。

感じるのではなく、考える。ただそれだけPhoto: Adobe Stock

そもそも「嫌いな人」には怒らない

私は「無駄なことを一切せずに、最小の努力で、最速で成果を出したいと考える」人間です。
これは決して私に限った話ではなく、世の中の多くの成果を出している上司がそうなのであろうと私は想像します。

できる限り、成果を出すために労力を使いたい。成果を出すために時間を使いたい。
会社から求められ「上司」となるポジションに出世したからには、そう考えるビジネスパーソンであるはずなのです。

であれば、わざわざ「成果につながらないこと」はしません
部下を叱るのは、それが将来の「成果」につながると信じているからです。部下に期待しているからこそ、叱るのです。
上司に叱られたからといって「もしかして自分は嫌われているのではないか」と悩む必要はありません

上司は、嫌いな部下は叱らないからです。
さまざまなハラスメントに対する世間の視線が厳しくなり、「叱ること」「怒ること」に恐怖心を覚える上司が増えているといいます。
下手にしかって「パワハラだ」と訴えられたくない。面倒なことには巻き込まれたくない。だから、部下がよろしくない行動をとっても、怒らず、関わらず、静かに距離をとってそのまま見捨てる上司が増えているのです。

その中にあって、「パワハラだ」と訴えられるリスクを負いながら、わざわざ貴重な時間と労力を使って叱ってくれているのですから、その上司は部下のことがむしろ好きであると考えるべきです。

しかられたとき、「心」ではなく「頭」でとらえると、「叱ってくれていることが、いかにありがたいか」が見えてきます。

(飯塚勇太著『20代が仕事で大切にしたいこと』から一部を抜粋・改変しています)

飯塚勇太(いいづか・ゆうた)
株式会社サイバーエージェント専務執行役員
1990年神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。
2011年、サイバーエージェントの内定者時代に、友人らと開発・運営した写真を1日1枚投稿し共有するスマートフォンアプリ「My365」を立ち上げ、21歳で株式会社シロク設立と同時に代表取締役社長に就任(現任)。2014年、当時最年少の24歳でサイバーエージェント執行役員に就任。2018年株式会社CAM代表取締役、2020年株式会社タップル代表取締役に就任(現任)。2020年サイバーエージェント専務執行役員に就任(現任)。
『20代が仕事で大切にしたいこと』が初の著書となる。