今、認知症研究の分野で脚光を浴びているのが「BrainSuite(ブレインスイート)」という医療プログラムだ。このプログラムの正体と、どのような方法で、どう予防するのかについて、開発したCogSmart(コグスマート)に取材を行った。

 2019年に設立したCogSmartは、東北大学加齢医学研究所発の医療・ヘルスケアサービス企業だ。同研究所は、2000年代初頭から、世界に先駆けて脳の画像データベースを構築してきた。そこで、生活習慣と脳の関係を研究している東北大学加齢医学研究所・臨床加齢医学研究分野教授の瀧靖之氏に話を伺った。

認知症は「予防できる病」になる?脳の異変を察知する新手法とは東北大学加齢医学研究所・臨床加齢医学研究分野教授、医学博士・瀧靖之氏。研究成果を民間にも活用してもらうため、2019年に株式会社CogSmartを設立した

「運動、食事、睡眠などの生活習慣が大脳灰白質や認知機能に影響を及ぼすのではないかと考え、8年間にわたるコホート研究(疾病の要因と発症の関連を調べるための観察的研究)を行いました。そして大規模な脳のMRI画像データベースを構築しました。脳の加齢や生活習慣に関する多くの研究知見を発表しています。さらに脳の中でも記憶をつかさどる「海馬」の体積を計測するAI画像解析技術も開発し、論文にて公表。この技術は、海外の大学や研究機関が公表した英語原著論文の中でも、その高速性、高精度が評価されています」(瀧靖之氏、以下同)

 こうした研究を踏まえて、CogSmartでは、AI画像解析技術をはじめとする数多くの研究知見を集積したBrainSuiteの開発に成功する。

 30代40代の健康な世代でも、海馬の体積や微細な萎縮の変化を可視化することで、生活習慣の改善を促すサービスとして一般にリリースしたのである。