インフレ・円安の時代に入った今、資産を預金だけで持つことはリスクがあり、おすすめできない。「先行き不透明な時代」には、これまで投資に無縁だった人も資産を守り・育てるために資産運用を始める必要がある。このままではあなたの現金の価値が下がる! インフレ・円安からお金を守る最強の投資』(朝倉智也著、ダイヤモンド社)が発売された。本書は、投信業界のご意見番が新しい時代を乗り切る「究極の運用法」をアドバイスするお金の入門書。大切なお金を守り増やすためには、どうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。

【投資のプロが教える】資産管理のベースとしておススメする、3本の債券インデクスファンドとは?Photo: Adobe Stock

おすすめは、eMAXIS Slim 先進国債券インデックス

 このような観点から債券ファンドでお勧めするのは、先にも登場した「eMAXIS Slim 先進国債券インデックス」(三菱UFJ国際投信)です。このファンドは信託報酬が年0.15%で、世界の債券に投資するインデックスファンドの中では最安の水準となっています。償還日は「無期限」となっており、運用期間の心配は不要です。

「eMAXIS Slim 先進国債券インデックス」がどのようなファンドなのか、中身を少し詳しく見てみましょう。このファンドは「FTSE世界国債インデックス(除く日本、円換算ベース)」という指数に連動する投信で、日本を除く世界主要各国の公社債に投資します。日本については、安定運用する分はすでに日本円の預金に置いていますから、債券ファンドは「日本を除く」インデックスに連動するものが望ましいでしょう。

「eMAXIS Slim 先進国債券インデックス」の構成は、下図をご覧ください。

 組み入れ上位の国・地域を見ると、アメリカが51.1%、フランスが8.5%、イタリアが7.7%、ドイツが6.3%、スペインが5.1%、イギリスが4.5%、中国が3.1%、カナダが2.0%、ベルギーが1.9%、オランダが1.6%となっています。このような国々の国債や公社債を中心に投資をしていくファンドであることがわかります。

 また組入上位5通貨を見ると、米ドルが51.5%、ユーロが33.8%、英ポンドが4.5%、中国元が3.2%、カナダドルが2.1%、その他が4.9%です。通貨に関して言えば、現在は米ドル一強という状況ですが、今後はユーロが強くなるかもしれませんし、中国元が強くなることも十分に考えられるでしょう。そのようなさまざまな可能性に対して、1本のファンドにお金を移しておくだけでこれだけの通貨を分散して持てるわけです。

「eMAXIS Slim 先進国債券インデックス」のこれまでの運用実績を確認しておきましょう。下図をご覧ください。

 運用開始から2022年10月末時点では、過去1年のトータルリターンが2.57%、過去3年のトータルリターンが年率4.10%、過去5年のトータルリターンが年率2.88%となっています。

カテゴリー平均は、
どれくらいのリターンを上げたかを示す

カテゴリー平均」というのは、同じように先進国債券で運用する他のファンドが同期間に平均どれくらいのリターンを上げたかを示すものなのですが、1年、3年、5年の実績を見ると「eMAXIS Slim 先進国債券インデックス」がカテゴリー平均を上回る成果を上げていることがわかるでしょう。

 トータルリターンが年率で2~4%台というのは、それほど大きなパフォーマンスとは言えませんが、「インフレに負けないように安定運用する」という目的に対しては十分でしょう。なお、「このファンドにまとまった資金を入れて大丈夫なのか」「値下がりするとしたらどれくらいか」といった点も気になるのではないかと思いますので、この点についても過去の実績を見てみましょう。

 設定来の最大下落率を見ると、1カ月間の間にマイナス2.59%、3カ月間の間にマイナス4.36%、6カ月間の間にマイナス4.56%、1年間の間にマイナス3.67%、下落したタイミングがあったことがわかります。

 値動きのある金融商品ですから一時的にマイナスになることはありえますが、それでも下落率は2~4%程度にとどまっていますから、資産が大きく減少するような事態を心配する必要はないといっていいでしょう。

他におススメの2本は、これ!

 なお、お勧めの1本として「eMAXIS Slim 先進国債券インデックス」をご紹介しましたが、運用の中身が同じで信託報酬も同水準のファンドがほかに2本あります。「ニッセイ外国債券インデックスファンド」(ニッセイアセットマネジメント)と、「ダイワつみたてインデックス外国債券」(大和アセットマネジメント)です(下図)。

 これら3本はどれを選択しても構いませんから、投資信託口座を持つ銀行や証券会社で取り扱っているものを選べばよいでしょう。

(※本稿は『インフレ・円安からお金を守る最強の投資』の一部を抜粋・編集したものです)

朝倉智也(あさくら・ともや)
SBIグローバルアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1966年生まれ。1989年慶應義塾大学文学部卒。銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事した後、1995年米国イリノイ大学経営学修士号(MBA)取得。同年、ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資金運用全般、子会社の設立、および上場準備を担当。1998年モーニングスター株式会社(現 SBIグローバルアセットマネジメント株式会社)設立に参画し、以来、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努める。SBIホールディングス株式会社 取締役副社長を兼務し、SBIグループ全体の資産運用事業を管掌する。主な著書に『全面改訂 投資信託選びでいちばん知りたいこと』『改訂新版 ETFはこの7本を買いなさい』『一生モノのファイナンス入門』(以上、ダイヤモンド社)、『「iDeCo」で自分年金をつくる』(祥伝社新書)、『お金の未来年表』(SB新書)などがある。