新規就農者が苦労しがちな二つのこと
能力次第で売り上げ1000万円も可能

 このように、安定した農業経営までのハードルが高いことは事実だ。ただ、堀江氏はミドル世代から農業を始めるメリットを次のように語る。

「会社の一社員として働くよりも、自分自身の才覚で経営能力を試したいと農業に挑戦する方は多いです。農業経営は起業と変わりないですからね。自分で農業経営について試行錯誤を重ね、その分収益として目に見える結果が出ることは会社員では味わえないやりがいを感じると思います。経営能力にたけた方で、全国に名がとどろく農家さんもいますからね。また、会社員として朝から夜遅くまで働き、家族との時間が取れなかった方からは、家族との時間が十分に確保されるので農業をやってよかったという声もあります」

 ちなみに、就農5年以上で販売額1000万円を達成する人は33%に上るという。ここから経費などを引くため、手元に残るのはその差額になるが、自らの経営能力次第ではサラリーマン時代の収入を超える可能性もゼロではない。

 ただ、属人的な能力に加え、気候や土壌など複合的な要因に左右されるため、農業には「絶対成功するというマニュアルはない」(堀江氏)という。とはいえ、その中でも就農の成功率を高める方法はいくつかあるそうだ。

「まずは、適地適作。その土地に適した作目を、もしくは作目に合った土地を見極めることが大前提です。特定の作目について、栽培のノウハウが確立されている産地を選ぶのもひとつの選択肢です。さらに、収益性と自分の生活のバランスに合った作目を選ぶことも重要です。作物ごとの面積あたり所得や労働時間、労働力なども考慮する必要があります」

 また、自治体によって新規就農者へのサポートの熱意は相当差があるという。新規就農者が多い自治体で農業を始めることも成功への近道かもしれない。

 さらに、農家に求められるのはコミュニケーション能力や人付き合いだ。

「新規就農者が就農時に苦労したことのツートップは農地の取得と技術の向上。農地取得は法的な条件もありますが、貸主との信頼関係も重要になります。技術やノウハウの点でも周辺地域の農家に聞いたり、支援してもらったりすることが不可欠です。いずれもコミュニケーションが大事になりますので、そこも農業を始めるにあたって重要な要素です」

 就農のハードルは低くはないが、自身の能力を存分に試せる場でもあるのではないか。