韓国政府は
中国の脅しに動じない
韓国政府と中国政府による対立が表面化したのは、前述の通り、4月19日に尹錫悦大統領が訪米前のロイターとのインタビューで「結局は(台湾の緊張高揚は)力による現状変更を図るために起きたもので、我々は国際社会とともに力による現状変更に絶対反対する立場」と述べたことからである。
これに対し、中国外交部の汪文斌報道官は4月20日、「台湾問題は純粋に中国人自身のこと」「他人からの口出しは容認しない」と激しく批判した。しかし、韓国外交部は、中国外交部の報道官が韓国首脳の発言に対し「口出しは容認しない」と述べたのは、「中国という国の品格を疑わざるを得ない欠礼である」として駐韓中国大使を招致し抗議した。
また、中国の秦剛外相が、「台湾問題で火遊びするものは必ず火で焼け焦げて死ぬだろう」と述べたのに対し、韓国外交部は4月21日に声明を出し「わが国首脳が『力による現状変更に反対する』という国際社会の普遍的な原則に言及し中国側の非礼を追求したものだ」と秦外相の主張をはねのけた。
韓国は以前のように中国の脅しにはひるまなくなっている。しかも韓中のあつれきは外交部のみならず、両国のメディアでの対立にまで広がっている。これは従来の韓国の姿勢とは全く異なるものであり、中国が強く出れば出るほど、韓国は日米との協力に活路を見いだしていくだろう。
中国外交部は
ケイ大使の発言を擁護
韓国政府の抗議に対し、中国外交部は9日、汪文斌報道官が行ったブリーフィングで「現在の中韓関係における困難や挑戦などは中国自ら招いたものではない」としてケイ海明中国大使の発言を擁護した。
さらに中国外交部の農融次官補は10日、鄭在浩(チョン・ジェホ)在中韓国大使を招致し、韓国外交部がケイ海明中国大使を招致したことに抗議した。農融次官補は「韓国側が駐韓中国大使と李在明代表の交流に不当に反応して抗議したことに重大な遺憾と不満を表明」した。中国側は次官ではなく次官補が対応することで、韓国の格を下げた。それは不快感の表明なのであろう。
次いで農融次官補は「韓国政府は、中韓関係の問題の所在を深く考え直して真剣に対処し、中韓修交共同声明の精神を忠実に順守し、共に両国関係の健全で安定した発展を追求するために積極的な努力をすることを希望する」と述べた。
中央日報は、この発言について、ケイ海明中国大使の発言を擁護し、両国関係の責任を韓国に転嫁しようとする趣旨だと、中国の姿勢を批判している。