認識を繰り返し創るカルチャー
これからの企業・組織は、3つの「進化の素」を、自己変容を繰り返す組織の深層部に埋め込む必要がある。それは、「認識(パーセプション)を繰り返し創るカルチャー」「イントレプレナー(社内企業家。(注1) )を育むカルチャー」「セレンディピティ(偶然を価値につなげる力)を育むカルチャー」である。
注1:ゼロから新しい会社を立ち上げる起業家をアントレプレナーと呼ぶ一方、企業内で新規事業を立ち上げ、そのリーダーとなって牽引する人を指す。ここでは、企業内の組織やコミュニティをリードするイノベーター全般として使用する
第1の「認識を繰り返し創るカルチャー」とは、企業・組織の「合目的性」を生み出す源である。群れとしてビジネスの意味を構想し、群れの内外に対して共感を生み出すカルチャーといえよう。それは、外部の環境変化に対する察知や認知にとどまらず、自己の存在意義(パーパス)とみずからのビジネスの本質に立ち返って、新たな認識を何度も繰り返し創造し、環境(社会・ステークホルダー)に働きかけ、センスメイクを繰り返していく行動様式である。
たとえば、コーポレートブランディングの世界では、自分らしさを規定するものがパーパスであり、パーパスのゴールは、何らかの価値観や世界観に基づき、社会的な認識を創る、あるいはこれまでの認識を変えることである。その時、変化し続ける環境に対して、認識を変えたり、新たな認識を獲得したりすることを繰り返すことがそのプロジェクトにとってのゴールになる。なぜなら、認識の変容がそのまま環境やステークホルダーの行動変容を生むからである。
経営学の世界では、センスメイキング理論という領域がある。このセンスメイキング理論とは、「組織のメンバーや周囲のステークホルダーが、事象の意味について納得(腹落ち)し、それを集約させるプロセスをとらえる理論(注2)」とされる。既存の企業・組織が、急速な変化に対応してみずから変化を繰り返すためには、認識を繰り返し創るカルチャー、すなわち群れとして、センスメイクを繰り返す行動様式を育む必要があるのだ。
注2:入山章栄『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社、2019年)
センスメイクを繰り返すことで、永続的に変化をとらえ、みずから変わり、変化を外に波及させることができる。