多くのチームリーダーを育む体質が企業を強くする
第2の「イントレプレナーを育むカルチャー」とは、企業・組織内に多くのリーダーシップを育み、群れが「自律性」を育むためのカルチャーである。
組織内でより多くの、いわゆる企業家と企業家マインドを育む仕組みを埋め込むことは、自律分散型の組織によって変化適応力を高めること、すなわちみずから組織学習を促進することによってパフォーマンスを高めるという行動につながる。
21世紀に入って、価値創出の源泉がイノベーションや改革を目的とするイニシアティブやプログラムを中心とするプロジェクトに移行している。それは、進化する群れの核となる多くのチームリーダーを育む体質が、「変革の原動力(Power of Change)」になることを意味しているのである。
一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏は著書『ワイズカンパニー』(注3) の中で、組織内のすべての層でワイズリーダー(注4)を創出することで、企業はあらゆる状況に柔軟かつクリエイティブに対応できるようになると述べている。そのような企業・組織は回復力に富み、長く存続できる。組織内外でより多くの企業家を育むカルチャーを埋め込むことによって、創造力だけでなく変化適応力も高まるのだ。
注3:野中郁次郎、竹内弘高『ワイズカンパニー』(東洋経済新報社、2020年)
注4:実践知を備えたリーダーをワイズリーダー(賢慮のリーダー)、ワイズリーダーに率いられた企業をワイズカンパニー(賢慮の企業)と呼んでいる
また、最近では「コーポレート・エクスプローラー(Corporate Explorer)」という書籍も発刊された(注5)。イノベーションへのアプローチとして、既存の会社・組織内部の人材をリーダーとして活用していくことの有用性を説いたものだ。イノベーションは、かつてはアントレプレナー(起業家)に任せるのが最善とされていたが、最近では、大企業における組織内の企業家を積極的に活用していく手法の有用性にも注目が集まっている。
注5:Andrew Binns, Charles O'Reilly, Michael Tushman, “Corporate Explorer: How Corporations Beat Startups at the Innovation Game”Wiley, 2022