なぜ多くの政治家は
市民より有力者に媚びるのか?

――なんと、ひっくり返したのではなく、逆に最後に追いつかれたと、泉さんは感じていた。当時の投票率はどのくらいですか?

 まあ、5割くらいです(47.64%)。選挙をするたびに不思議に感じるのですが、「自民党や与党が固まったら決まり」とか、それ単なる思い込みですよ。そんなことで決まるわけない。でも、対抗馬の候補者も「だったら公明党の票がほしい」とか言い出すんですよね。「そっちじゃないだろ!」と。

 必要なのは有権者である市民の共感だし、有権者からの期待でしょう。なぜ、一部にすぎない有力者に媚びを売ることばかり考えるのか。

――泉さんの言うことは正論です。いっぽうで、有権者である市民になかなか声が届かないという現実もある。だから、そういう候補者は、大きな組織に太刀打ちできずに負けてしまうことが多い。投票率5割だと、普通の候補者がまともに戦ったらやはり厳しい。

 最初の選挙で、圧倒的マジョリティである庶民・市民に声を届けるために、何か工夫されたことはありましたか?

書影『政治はケンカだ! 明石市長の12年』(講談社)『政治はケンカだ! 明石市長の12年』(講談社)
泉房穂、鮫島浩 著

「市民vs.オール与党(古い政治)」というわかりやすい構図になったことが大きかったのかな。私のキャッチコピーは、「私たちの代表を市長に」とか「明石市民推薦」とか、「市民とともにある」という部分を押し出しました。選挙演説でも、「皆さん」とは言わず「私たち」と言います。私がここにいて、市民が向こうにいるわけではありませんからね。私も市民の中にいるわけですから、選挙の時だって「私たちの戦い」になるし、「私たちで頑張って明石市を変えよう」となるわけです。「皆さん」なんていない。

 むしろ、既得権益の方々が向こう側にいる「彼ら」ということになります。当時喋ってたことは、「私たちの明石を私たちの手に取り戻そう」とか、「私たちの社会を諦めてはいけない」とか、「これから子どもの時代が来る。子どもに優しいまちにすれば経済が回って高齢者にも還元される」とか。言ってることは今と全く同じです。