世界シェアの高い商品を持つ企業が多く、増益基調の銘柄が目立つ医療機器セクター。従来は低侵襲の医療機器は需要が強く、参入障壁も高かった。だが5年という期間では、足元でひそかに進行するDX(デジタルトランスフォーメーション)化に取り残されると、一気に負け組への転落リスクもある。特集『円安・金利高・インフレで明暗くっきり! 株価・給料・再編 5年後の業界地図』(全24回)の#13では、高齢化の進行と同時に病気の種類も変わる可能性がある中、中長期で勝ち抜く医療機器の本命企業を探した。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
※2022年6月27日に公開した有料会員向け記事を、期間限定で無料公開!全ての内容は取材当時のままです。なお、7月中旬から特集『5年後の業界地図2023年版』がスタートします。ご期待ください!
高収益企業がそろう医療機器業界だが
「勝利の方程式」が通用しない時代に
「オリンパスの消化器内視鏡」「テルモの脳血管治療用デバイス」――。
世界で高いシェアを獲得している商品を持つ企業がそろう医療機器セクター。TOPIX(東証株価指数)と比較して年初からの株価推移はさえないが、これは市場評価が高い企業が多く、世界的な「グロース株売り」に巻き込まれたことが大きい。
引き続き主力企業の今期の業績見通しは堅調で、オリンパスは営業利益34%増、テルモは同14%増、朝日インテックは同14%増と2桁増益を見込んでいる。
ROE(自己資本利益率)や売上高利益率が2桁以上の高収益企業が多く、今までは算入障壁も高い業界だった。なぜならば年々、医療機器の承認取得のハードルが上がっており、医師とのコネクションも重要だからだ。新型コロナウイルスの感染拡大で先延ばしにされた手術数も回復し、世界的な高齢化も追い風になる。
一見すると順風満帆に思える医療機器セクター。にもかかわらず、今後5年間を見据えると「大波がやって来ている。コロナ前までの勝利の方程式が通用しにくくなるだろう」と、みずほ証券の森貴宏シニアアナリストは喝破する。
なぜか。実は医療機器セクターには「二つの大きな変化」が起きており、すでに日本企業は出遅れ気味だからだ。乗り遅れると、かつて日本のお家芸だった半導体や電機が没落したようなゲームチェンジが起こりかねない。実際、森氏は長年の優良銘柄で足元も悪くない企業に対しても、具体的な理由を挙げて厳しい見通しを明かしている。
果たして日本の医療機器メーカーは、今後も高い利益率を維持しながら業績と株価を維持できるのか。次ページでは足元で起こりつつある急激な二つの変化の内容と、それにより浮かぶ企業、沈む企業について具体名を挙げて解説していく。