ビジネスの現場では、人前でハキハキと話せる「社交的な人」が有利だと思われがちです。しかし、台湾出身で、超内向型でありながら超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャン氏の世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(神崎朗子訳)によると、「内向的な人」こそ、冷静さ・思慮深さ・協調性といったビジネススキルを兼ね備えているといいます。
内向型の生まれ持った強みを肯定し、勇気づける本書には、「目からウロコの内容に感動した」「自分らしく生きていけばいいと気づけた」と日本中から絶賛の声が集まっています。
今回は、読者から寄せられた仕事や人間関係の質問に対する、チャン氏の回答を公開します。(構成/根本隼)

上司からの無茶ぶりへの「頭のいい人」の対応・ナンバー1Photo:Adobe Stock

困ったときは「一歩引いて考える」

読者からの質問 「自分らしさ」を保つために意識的に取り組んでいる習慣はありますか。

ジル・チャン氏 常に自分らしくあり続けるのは、簡単ではありません。でも、状況に応じて別人のようにふるまうのも、疲れてしまいますよね。

「自分らしさ」を失わないために私が意識しているのは、「困ったときは一歩引いて考える」ということです。

 どう行動すべきか迷ったときは、「自分はどんなタイプの人間なのか」「自分の長所は何なのか」を、少し時間をとって考えてみてください。そうすると、自分にふさわしい対応が見えてきます。

 たとえば5、6年くらい前に、「職場では『オオカミ』のようにアグレッシブに行動すべきだ」という説がさかんにもてはやされていたときのことです。

 当時の上司にも、「君はオオカミになりきれていない」と言われたのですが、私はオオカミのような攻撃性がない、おとなしいウサギタイプの人間です。そんな私に「オオカミになれ」なんて、無茶な話です。私の性格を知っているはずの上司が、「一体私に何を求めているんだろう」と戸惑いました。

 そこで私は、一歩引いて、上司のこれまでの言動や自分の持ち味、仕事の進捗などを総合的に考えてみたんです。

 すると、上司が「オオカミになりきれていない」という言葉で伝えたかった真意は、「一度立てた目標(=獲物)は、確実に達成しよう(=仕留めよう)」ということだと思い当たりました。

 この気づきのおかげで、自分のモヤモヤは完全に解消できました。私は、自分なりの流儀で仕事を進めても、「オオカミのように」目標を達成できるということがわかっていたからです。

 なので、自分のなすべきことがわからなくなったら、焦って行動する前に、まず考える時間をとりましょう。

 そのうえで、自分の性格や強みを念頭に置いて、「いまできること」に集中すれば、自分らしさは自然と発揮されると思いますよ。