日本の人材不足を“川上”の中国で補う企業も

 一方、ITソフトウエア開発企業の留学生採用は、好景気を背景に今年も採用枠を拡大している。ITサービスを取り扱うH社の場合はDX需要の急増もあり、人材不足が続いているようだ。

 同社管理職のI氏は「弊社で働く中国人社員は東大、早大、慶応の理系院卒がほとんどですが、国籍別に採用枠が明確にあるわけではなく、日本人と平等に面接を行って審査します」と話す。

 中国人留学生にとって、競争相手は同じ国の出身者だけではない。日本人のみならず、アジア全域から集まるインド人、ベトナム人、韓国人も参戦してしのぎを削る。

 一方で、H社は、中国における大卒の就職難を「“好機”に転じられないか」と虎視眈々と動向を見つめている。2023年、中国の大卒者は1000万人規模となり、ますます新卒者の就職が厳しくなる中で、I氏は「中国での新卒採用で、日本の人材不足を補う戦略を模索中です」と話す。

 日本ではソフトウエアエンジニアが圧倒的に不足しているが、これに加えH社ではDXに精通している人材、AIやメタバースなどの新領域への研究人材などを“川上となる中国”で積極採用しようと検討を進めている。優秀な中国人留学生でも日本の就活に苦戦しているのは、こうした事情が絡んでいる可能性もある。

 また、中国人留学生の就職支援を行う都内団体の責任者J氏は「競争相手は優秀なアジア人だけにとどまらない」と近年の傾向をこう説明する。

「日本で育った2世たちが日本で就職する時期を迎えています。彼らは高学歴である上、日本と中国の両方の習慣を熟知し、なおかつ日本語、英語も堪能です。中国人留学生はこうした人材とも競争しなければならないのです」