次に、彼女のバイト先であるというカフェに行ってみました。アルバイトの男性スタッフや店長に聞き込みしてみましたが、そんな人はいないという回答でした。隠しているような様子は感じませんでした。

 中岡さんに伝えていた内容は、うそだったようです。手がかりがなくなり、行き詰まってしまった私は、SNSで那美さんを探してみることにしました。出身市や中岡さんが記憶している彼女の趣味、興味や関心などの情報をもとに、SNS上で彼女の足跡を探しました。

 しかし、なかなか彼女の手がかりをつかむことができませんでした。数日たった時、中岡さんは、那美さんが男性地下アイドルグループのライブに行きたがっていたことを思い出しました。私はファンが作るコミュニティーに参加している可能性を探ることにしました。

 その特定のコミュニティーに参加するために、私もアカウントを作成し、彼女が登録している可能性のあるグループやイベントを探しました。そして、ついに那美さんらしきアカウントを見つけ出しました。発信している内容と、掲載している画像の顔は隠していましたが、服装や体型はわかるものがあり、そこから那美さんと特定できました。

 そしてファン同士のやりとりから、那美さんが行く予定のライブを突き止めました。

相手を特定でき、
お金を返済してもらえるのはまれ

 ライブの当日、会場で人の出入りを確認していると、那美さんらしき女性が会場に入っていきました。撮影した画像を、付近の喫茶店に弁護士と待機している中岡さんに確認してもらったところ、那美さんに間違いないとのことでした。

 数時間後、ライブが終わって会場から出てきた那美さんに、弁護士が声をかけ中岡さんが待つ喫茶店に入りました。

 私の仕事は、ここで終わりました。

 その後、那美さんは結婚前提ではなく援助してくれそうな人を探していたら中岡さんと出会ったこと、借りたお金は遊びやライブにほとんど使ったこと、身分を偽っていたことなど、全て白状したそうです。中岡さんは訴えない代わりに借用書を交わし、那美さんは毎月返済することになったそうです。実際に返済もされているようです。