PB黒字化の表記は消えたが
実質的には記載されている

 原案の段階で、国・地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を2025年度に黒字化することを目指すという、いわゆるPB黒字化目標とその達成年度が骨太の方針から消えたと、ネットを含めた大手メディアの論調では騒ぎ立てていた。

 確かに文面上はPB黒字化という文字も表現もなくなっているが、「令和6年予算編成に向けた考え方」というところに、「令和6年度予算において、本方針、骨太方針2022及び骨太方針2021に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進する」と記載されている。このうち骨太の方針2021にPB黒字化目標が記載されており、明記こそされていないものの、骨太の方針2023にも実質的に記載されているのと同じである。

 さらに、時を同じくして、立憲民主党の落合貴之衆議院議員が「我が国の財政についての政府の認識に関する質問主意書」を提出しているが、その中で、骨太の方針原案において「経済あっての財政であり、経済を立て直し、そして、財政健全化に向けて取り組む」と記載されていることを踏まえ、当面カレンダーベースのPB黒字化目標は置かないという趣旨なのかを質問している。

 この質問主意書に対する政府の答弁書では、「政府として、引き続き、2025年度の国・地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化を目指すこととしている」とし、PB黒字化目標堅持が、達成時期と合わせて明記されている(ちなみに落合議員は、立憲民主党における数少ない積極財政派議員の一人である)。

 つまり、骨太の方針2023に明記こそしなかったものの、政府(というか財務省)はPB黒字化目標を放棄するつもりは全くないということである。

 このPB黒字化目標、ご存じの方もいると思うが、平成13年に小泉政権下で導入されたもの。それ以降我が国財政の柔軟性を奪う足かせとなってきた。詳細な説明は省くが、そもそも国債は借金ではなく、国の債務の形式による通貨発行である。

 したがって、国債の発行残高は増えて当然であり、例えば、最近、債務上限法騒動があった米国でも増え続けている。しかも自国通貨である円建てであり、自国通貨建て国債のデフォルト(債務不履行)は考えられないことは、財務省も認めている。つまり、PB自体を財政の状況を見る指標の一つとして使うのであれば別段、これを絶対的な目標として、目標年度まで設定して置くようなことをするのは百害あって一利なしなのである。

 加えて、国の財政はその時のマクロ経済の状況に応じて積極的になったり消極的(緊縮的)になったり、柔軟に運用するのが当たり前であり、本来の役割である。

 現在の我が国のように需要が不足し、海外からの輸入物価の高騰によるコストプッシュインフレの状況であれば、需要の下支えと、国内における輸入品を代替する財の供給力の強化のために国はもっと積極的に財政支出を行わなければならず、それは十分可能である。「常に黒字でなければならず、それを目指さなければならない」とするPB黒字化目標は、端的に言って間違いなのである。